「女は不器用、男は紳士、どちらも純粋。」海月姫 Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)
女は不器用、男は紳士、どちらも純粋。
『海月姫』(2014)
Amazonプライムで選択に困ったが、なんでもいいから観ない事にははじまらない。しかし、Wikipediaによると、シュールなラブコメというので、選択を間違えたかと思ったが、見続けているうちに、オタク女子というのか、変り者になってしまった女性たちと、大物政治家の変り者の兄弟2人などのキャラクターが純粋で愛らしく、何か大事な気持ちのようなものを表しているのかという気持ちもした。しかし、怪優でもある菅田将暉の女装が小柳ルミ子に見えた。多様性というのは、人を取り換えて乱交することではなくて、個性がありすぎたり、外見のみせかたが変になってしまったりしても、良いところを感じて、認め合って、外見のメイクにも努力したり、一途に個性的な人同士が愛し合うことも多様性というのではないかという思いをさせたりする作品かも知れない。だが、もとも美形の池脇千鶴なんかはオタクメイクしすぎて誰だかわからない。一方で、土地開発会社の枕営業を使う片瀬那奈に対して、ド真面目で振り回されるが、いざとなったときに、片瀬の頬をひっぱたいて出ていった長谷川博己が演じた政治家の長男などは、まさに男心を持つ奴なのだ。主役の当時能年玲奈で、わけあって今はのんであるのんが、メイクして美しく変身するところなども考えてみる面がある。そして次男の菅田将暉ものんに関心があるのだが、お互いに兄弟を思ったりして、本当に恋や愛が理解できる人達というのは、不器用に生きていながら、本当に恋愛する人は特定の人で、それを探す段階だと精神的な接触まででとどまるのだろうと思う。ニートなオタクたちも、ここは資本主義の世の中で、ウェディングドレス作りをする流れになって、やりがいと団結を見出していく。表面上は変わっているが、生きていくための推移としては、スタンダードな流れという気もした。また、主人公に対する恋愛も、政治家の兄弟との三角関係というスタンダード気味な展開でもある。なにかと片瀬那奈が開発にかかるが、発端は、オタク女子たちが住んでいる天水館の開発取り壊しの担当の片瀬に抵抗しようとしていたのだが、思えば、壊すとしても、移転すれば良かったのではないか、移転の金は補助されないのかというようなこともふと思ったのだが。そういうわけにもいかないのか。不器用な生き方をしている人たちや、再開発ということで変わってしまうことなど、そして、それに立ち向かうところ、すごい設定であると思う。次男なんか、政治家の父親に立ち向かい、オタクたちと協力した。しかし菅田将暉の華はすごいと思う。ある意味、オタク女子たちという難しく偏ったというような型が出来上がった人達に対してのリーダーシップを発揮する次男にしても、主人公がオタクであろうと、自分が現職大臣の長男で秘書であろうと、良さを感じて好きになる純粋な長男にしろ、次男の女装という逆転は、ちょっと私の範疇は超えるが、それはともかく、女に対する精神としては、男の本当の在り方を見せようとしている作品でもあるのかも知れない。そして、不器用で純粋でマニアックな女性たちもいる。濃厚な接触ラブシーンなどいらないし、この映画を良質にしているのは、不器用な女たちと紳士的な男性たちの組み合わせからであった。エンディングイメージがセカオワで、監督が私より一学年下の同世代なのか。