劇場公開日 2025年3月22日

「死体はナマズのせいじゃない 映画の外観とは裏腹に冴えない中年男の純愛ラブ•ストーリーだった??」湖の見知らぬ男 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0死体はナマズのせいじゃない 映画の外観とは裏腹に冴えない中年男の純愛ラブ•ストーリーだった??

2025年5月7日
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鑑賞方法:映画館

横浜の長者町にあるミニシアター 横浜シネマリンさんでアラン•ギロディ監督特集というプログラムをやっておりまして、なかなか面白そうな感じだったので行ってまいりました。この『湖の見知らぬ男』がその日の上映では最初だったので私にとっての初アラン•ギロディ作品ということになります。これが面白かったら、次のも見ようかなと思ってましたが、けっこう面白くて次、またその次と結局1日で3本全部、鑑賞を完了しました。

鑑賞上の注意点としては、恐らく3本とも映倫の審査を受けていません(終了時に画面スミに出てくる映倫マークがありませんでしたから)。よってG18等のレイティングについても公式には存在せず、映画館側の責任のもとで上映しているということになります。ということで、特にこの作品では男性器がそのまま映っているシーンが多々ありますので注意が必要です。私の場合は最初はびっくりしたのですが、そのうち特に気にならなくなりました。

さて、物語の舞台はゲイの人たちが相手を探すために集う、森に囲まれた湖のほとりのヌーディストビーチです。この湖というのがいいですね。世界に繋がっていて開放された感じの海ではなく、上流、下流とか、こちら側の岸、あちら側の岸とかいった二者対立構造のある川でもなく、何か行き止まり感のある森に囲まれた湖。そんな湖をこの作品では美しく捉えています。また、自然音のつかまえ方がとてもうまく、風が吹いて木々がざわめく音は背景で常に鳴っている感じで、物語の緊張感を高めてくれます。

その湖で一体の水死体が上がります。ヌーディストビーチに来ていたゲイのうちのひとりの死体です。彼は泳ぎが上手だったということで事故死ではなく他殺説が浮上します。さて…… ということなんですが、ここではミステリ要素はあまり強くありません。それよりも湖畔に集うゲイたちの人間模様、恋愛事情を中心に描かれてゆきます。

登場人物のうち、私が特に注目したのはアンリという見映えのぱっとしない冴えない中年男です。彼もこのゲイのハッテン場であるビーチに毎日来てるようですが、相手探しをするでもなく、ひとりぽつんと離れてすわり、フル•ヌードにもなりません。ビーチに来るイケメン青年のフランクと言葉を交わすようになりますが、彼に積極的にアプローチしたりもしません。まあフランクには別の恋焦がれる相手がいて、すぐにそういう関係になるんですけどね。一方、アンリはフランクに少なくとも日本語でいう「気がある」程度には好意を持っていると私は感じました。でもフランクには別の相手がいて自分のことを恋愛対象としては見てないということがわかっているアンリは彼に対して世間話や身の上話をしたり、食事に誘ったりと、ゲイのハッテン場で会ってるにもかかわらず、一般の恋愛の初期段階みたいなことをやっていてなかなか可愛いです。でも、結局はアンリがいちばん大人で周囲もよく見えていて、フランクを守りたいという方向に進んでゆき……

物語は怒涛の展開を見せ、暗闇の恐怖の中、ぷつんと終わります。なかなかの幕の引き方だったと思います。

最後に、特に気にならなくなったという露出の件。ビーチで全裸でいる分にはそこの男たちが皆、自然の一部になったみたいでいいのですが、森の中でのシーンにさすがにこれはやり過ぎだろというのが数ヶ所あったので、星半分減点です。

Freddie3v
きりんさんのコメント
2025年5月12日

フォローありがとうございます、もちろん僕からもヨロシクです。

本作未鑑賞ですが
「3本立て」をやっつけるその体力、敬服します!びっくりしたのでこちらにコメントしてしまいました(笑)

「来し方 行く末」、いい映画でしたね。

きりん