「ありふれた話だからこそ」プールサイド・デイズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ありふれた話だからこそ
開幕早々主人公の少年ダンカンは、母親の恋人から辛辣な言葉を投げ掛けられる。
「自分に点数を点けるとしたら?」と問われ、「6点」と答えると、「お前は3点だ」と。
コミュニケーションが苦手で、内向的なダンカン。
夏休み、母親とその恋人と共に、恋人の別荘で暮らす事に。しかも、あちらの前の家族も一緒に。
最近、母親との関係はぎこちなく。
その恋人はやたらとキツく当たり、苦手。
彼の娘とその友達とは住んでる世界が別。
別荘でひと夏を過ごす。
本来ならウキウキ楽しい気分になのだが、“3点”のダンカンにとっては憂鬱でしかない。
そんな時…
出会ったのが、ウォーター遊園地で働く男、オーウェン。
いい加減で自由奔放な性格だが、何故だか不思議と惹き付けられる。
オーウェンはダンカンに何の隔てもなく接してくれるからだ。
他の人たちは、母親も、腫れ物やヘンな目で見てくる。
それがイヤなのだ。だからこちらも壁を作ってしまう。
オーウェンに心開き、ウォーター遊園地でバイトを始めるダンカン。
いきなり初日、プールサイドでヘッドスピンをしてる連中に注意するなんて難題を押し付けられたが、彼は彼なりのやり方で。
“3点”の少年の中で、何かが変わり始める…。
小品ながら、周りを固めるキャストは豪華。
オーウェン役のサム・ロックウェル、母親の恋人役のスティーヴ・カレルが特に印象残る好演。
主人公ダンカンに扮したリアム・ジェームズの繊細な体現もあってこそ。
監督は多くのアレクサンダー・ペイン作品に携わったナット・ファクソンとジム・ラッシュ。
この辛口のユーモアとほろ苦さとしみじみとした感じ。
少年の成長、出会い、初恋、家族との関係、ひと夏…。
ありふれた話ながら、いやだからこその好編。
自分は“3点”かもしれないけど、このひと夏の経験は10点満点。いや、無限大!