劇場公開日 2016年3月5日

  • 予告編を見る

「ロボットのフィルターを通した反戦映画!」オートマタ Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ロボットのフィルターを通した反戦映画!

2016年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

知的

誰もが手にひらにコンピューターをもち、
対話型ロボットがショールームの説明をして、
あと数年もすれば車の自動運転が始まる。
幼い頃夢見てた時代が、現実になりつつありますね。
先日もニュースで見ましたが、
囲碁ではスーパーコンピューターに
人間はかなわないらしい。

そんななか昔から思うのは、
人間の知能を超える人工知能が現れたら
どうなるんだろう?ということ。
誰もが想像する近未来の話を、
哲学的に描いたSFディストピアです。
とはいえ退屈な時間は微塵もなくて、
アクションあり、謎解きありと
オシャレにエンタメしてます。

人類終焉を漂わせた近未来の地球で、
無数のロボットが人間社会に奴隷状態として
共存してるんだけど、
2つの安全規約で支配されています。
「ロボットは、いかなる生命体も傷つけてはならない。」
「ロボットは、自身あるいは他のロボットを改造してはならない。」
それを破ったら、どうなるのか。
黒幕は誰なのか。
緊迫したサスペンスが転がり続けます。

この映画に出てくるロボットは決して強くありません。
けど人間よりずっと知性的で、
逆に人間が野蛮に描かれています。
そこがハリウッド的ではなくて、よかった!

全体にシルバーブルーのクールな印象に
アートディレクションされているのは、
スペインの鬼才ガベ・イバニェス監督のセンス。
世紀末の街の美術もカメラ回しも照明も、
イスラエルの製作陣の力で、
シュールな世界観を創り出しています。
ロボットもCGではなくて、
等身大を動かす手法。
リアリティがあるから、
人間味に溢れていて面白いです。

名作ブレードランナーのオマージュもたくさん。
何やらゴヤ賞やサン・セバスチャン国際映画祭など
聞いたことがない(笑)映画祭に出品されたらしく、
そのニッチなカンジも好き。

スペイン出身の名優アントニオ・バンデラスは、
そんな空気をつかんでさすがの存在感ですね。
スポーツ刈りなカンジも、サイバー佇まいで。
離婚した元妻メラニー・グリフィスが共演してるのは、
笑いましたが。
あとはタランティーノのジャッキーブラウンで
異才を放ってた名優ロバート・フォスターに
久々に出会えたのは、大きな収穫でした。

自我に目覚め、
人間たちを俯瞰でみるロボットのセリフが、
いちいち胸にしみる。
「人間が、互いに殺し合うことができるなんて、
 知りませんでした」
「人間の善いところは引き継ぎます」
これはロボットのフィルターを通した、
見事な反戦映画だった。
思いもよらず、秀作をひろいましたよ。

Cディレクターシネオの最新映画レビュー