「革命芸術への思い」妻への家路 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
革命芸術への思い
「紅いコーリャン」とそれに続くチャン・イーモウ作品の独特の色彩世界を期待して観ると肩透かしを食う。
若い頃の鮮烈でエネルギッシュな画面ではなく、肩の力を抜いて、歴史に翻弄された一家の健気な姿を冷静に映し撮っている。
今作の撮影は、4Kデジタルカメラを使用しているらしく、スクリーンに映し出されるものが何から何まで明快である。
そのことを最も強く感じたのはコン・リーの容貌に刻み込まれた年齢である。「紅い~」からの彼女を観てきた観客はきっと、夫の帰りを待ち続けた主人公の年月と、女優として歩み続けてきたコン・リー本人の年月とを重ね合わせることになるだろう。
また、親子3人がそろった家で、娘のバレエを夫婦で見るところでは、リーとチェン・ダオミンには自然な窓からの光りが当たっているのに、彼らの若く美しい娘の顔には陰ができている。このほかのチャン・ホエウェンの踊るシーンもどれも影が深い。現代の映画製作者が、文革期に創作された革命を称揚する舞台芸術にどのような感情を抱いているのかをうかがい知ることができる。
彼女が踊るのは、チェン・カイコーの「覇王別姫」においても苦々しく描かれていた革命芸術なのだ。
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