「文化大革命は終わらない」妻への家路 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
文化大革命は終わらない
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文化大革命で、右派とされ逮捕された夫、文革が収束し、帰宅するがその長い間に妻は心因性の記憶障害となり、毎日待ち続ける夫を認識できない。
文化大革命はまさ、小説より奇なり、の、最たるもので、本当にありえないようなことがあのように広大な土地のあちこちで非常に長きに渡り起きた、そのことは知れば知るほど驚きしかない。文革収束後も、おそらく今も、このような悲劇、惨状幾多と思われる。終始物静かな展開で、コンリーが美しく凛としながらも次第に老けていく姿に、心から文革に人生を掻き乱された人々の思いを深くかんじる。夫が妻の記憶をよりもどしたい一心で自ら調律し演奏する自宅の古いピアノの音色も、か細口小さな音でとてももの悲しい。文革で逮捕収容された人々を迫害したりその時権力を振るうたものもまた終息後に取り調べを受け、右派も左派もその時の政治に翻弄されいつでもひっくり返される。コンリーが演じる妻は変わらず、バレエで主役を踊りたい娘に、当時も、今も、兵士の役もよいよ、と静かにさとす。
溢れる思い怒り悲しみをこのように静謐に表現するコンリー、チャンイーモウ渾身の作品。しかも、Unext見放題に含まれておりたくさんの方がみることができる、ということは素晴らしいこと。
2021年未だに終わらない文革の悲劇と、今もたいして変わらないまたはよりひどい世界に我々も生きていることを実感する。
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