イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密のレビュー・感想・評価
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泣けました・・
よく出来た映画です。天才の孤独と周囲との軋轢、あるいは周囲の優しさに溢れていました。
そしてまた、戦争という時代の非人間性にも圧倒されました。情報を得ながらも巧妙に隠すことへの葛藤。天才だけど実は寂しがり屋の主人公には耐えられず、戦後の悲劇は起こるべくして起こったのかもしれません。
ここのところ、アメリカンスナイパーとかフォックスキャッチャーとか、人間の心の揺れ動きを描いた映画が続きましたが、これらの中でもこのイミテーションゲームは秀逸です。主役のカンバーバッチの見事な演技力に依るところも大きいですが、この戦争悲劇をグイグイと見せてくれた脚本が素晴らしい。現在と二つの過去を混在させながら、最後の元夫婦の邂逅シーンに持っていく流れには泣きました。キーラナイトレイに言わせる最後の励ましの台詞が、仕事ばかりの人生送ってしまった自分には、あまりに素敵過ぎです。何事もなしてないのに、女子からの励ましだけを欲してもしょうがないんでしょうけどね。
戦争の悲劇話ではありますが、この物語は極めて普遍的かもしれません。何かを成し遂げたいと実は心の底で思ってる男どもにとっては、自分も含めて、非常に魅了される物語でした。とはいえ、成し遂げた後に気づいたときには、失ったものも余りに大きすぎたわけなので、凡人はやはり大したことは成し遂げられないのですね。
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カンバーバッチが主演、天才数学者、暗号解読。
収集した事前情報がそれだけだったため、
スリルあふれる頭脳戦が繰り広げられるのかと思っていたが、
正反対のヒューマンストーリーだった。
3つの時間軸が交差して描かれていくが、とても観やすい構成だった。
鑑賞後にアラン・チューリングについて検索してみたが、
映画の随所に彼所縁のモノがちりばめられていたようだった。
個人的にWW2を英国視点で知る機会がなかったため、
その点では非常に新鮮だった。
また台詞の言い回し、所作、身に付けている服に英国らしさしか感じられず
大変興奮した。傘を差さない英国紳士プライスレス。
ひとりの素晴らしい功績を遺した偉人の半生記として、
とても良い映画だったように思う。
死の直前にジョーンが彼の家を訪れたのも、彼女でなければ勤まらなかっただろうし、戦後からラストへ向けてのカンバーバッチの演技は心に来るものがあった。
アランがジョーンに、ジョーンがアランに言った台詞が
ジョーンを掬い上げたし
アランを救ったのだと思うと
二人は確かに親友であったのだろう。
アランは初恋の相手を生涯想って生きてしんだのかと思うと、
あの時代の法律も、戦争も、病も、憎く思うけれど
せめて命が終わった先では幸せになっていてほしい。
みんなで走って研究室へ!
「イミテーションゲーム」見ました。
カンバーバラバッチバさんですか、かっこいいです。天才役もよく似合ってる。
んー、難しかったです。頭が悪い僕には細部までは理解できず。彼らが成し遂げようとしている事が凄いんだろうなーってのは分かるんだけど、彼らの行動世界があまりに狭すぎるので、ただただ地味でつまらない展開が多い。酒場で女を口説いてる時に奇跡的に解決策を見つけて、その場からみんなで研究室に走り戻る場面、そこがかろうじてアガる程度かな。
あとはチームワーク向上プロセスの見せ方が雑。主人公が歩み寄る場面がリンゴを差し入れする所くらいしかない割に、次の瞬間にはなんか褒め合ってるし。周りが主人公を信頼するようになる理屈がどうしても分からない。ただし、そのリンゴの場面は主人公の不器用さがすごく良く出ていて面白かった。あとはチームのメンバーもキラッとしてて良かったし、何より頭が良くて切れる人にしっかり見える配役。とくにあのヒョロ長の人かな。滝藤賢一に似てる人もいるしね。
映画が終わってエンディングでその後の彼らの活躍などが文字で説明されるんだけど、その内容がこの物語のすべてのように感じたし、なによりそれが一番ふむふむと頷いてしまった。とにかく話が難しいんですよ。エニグマとは何かを理解しておけとまでは言わないが、少なくとも戦争における暗号解読とはどういう物かの予習は必須です。僕は無知であるがゆえ、チンプンカンプンでした。
チューリングへのレクイエム。
アイアムレジェンドの形式で進められていくストーリー。(元はわかりませんが)
単純な推理ではなく、こちら側にあれ?と思わせる様々な「イミテーション」があり、常に考えて観てしまう。実話と言うこともあり、ソ連のスパイ容疑をかけられるなど政治背景もバッチリでした。
ラストの資料を燃やしながら皆で騒いでいて、彼の死を告げるというシーンが何だか印象的。
少しエグいのと、カンバーバッチ見直しました。
ちょっと文句言うと、過去変が最初から予想できたシナリオだったので「ふーん」で終わりでした。もっと濃くしてほしかったかな、
素晴らしくも悲しい話
ベネディクト・カンバーバッチ、うまっ!
キーラ・ナイトレイ、目が怖いっちゅうかキツい…けど美人の目やねぇ~
内容はドイツの最高暗号機エニグマの解読に立ち向かう数学者の話
今…警察に目をつけられている大学教授
昔…エニグマ解読と、解読後の母国(イギリス)・ドイツ・ソ連への対処
もっと昔…学生時代に同性の同級生への恋心
の3時代
謎解きでもなんでもなくマイノリティがテーマ
最初に言っておくとこの映画は謎解きとかどんでん返しとかそういう映画じゃないです。
伝記です。
マイノリティという言葉は劇中に一度も出てきませんがこれがこの映画の軸です。
アランは同性愛者で恐らくアスペルガー症候群の天才数学者。マイノリティという言葉そのものって感じ。
そんなだから最初は鼻つまみものなんだけどジョーンというもう一人の天才と出会って彼女の助言もあってか変わっていく。
アランの台詞の端々に人をバカにするようなものがあることからわかるように、アランは自分と同等以上の頭を持った人間じゃないと相手にしないんだろう。
結核で死んじゃった友達とかジョーン位だったんじゃないかな。
だからジョーンの説教も時間の無駄と言わずに聞いて、ちゃんとリンゴを買っていった。微妙なジョークも覚えて笑
で、友人関係は何となく順調。
エニグマを解読してからが問題だった。
アラン達はエニグマを解読されたことをドイツに悟られないようにまず、500人の市民を見捨てた。その後もちょくちょく見捨ててる。
国家という枠組みの中にある、ある種のマイノリティを見捨てちゃった。
正しい決断だし、結局は良いことなんだけどカフェの窓から見える足を無くした兵隊さんを見るジョーンの目はちょっと悲しそうだった。
戦争に勝利した後、MI6の人に全ての証拠を燃やすように言われる。
もちろんこれはアラン達の功績も全て燃やすことになってしまう。
でも彼らがなにも言わずに従ったのは国家のためだから。
国家のために市民を見捨てた彼らにはなにも言えなかったんだと思う。
その後、みんな別々の人生を歩く。
アランは一人でコンピューターの改良をしていた。
同性愛の罪で起訴されたアランの元をジョーンが訪ねる。
彼女は"普通"を手にしていた。
アランはそれを羨ましそうに言った。
ジョーンは、「普通を手に入れられたのは普通でないあなたのお陰」とアランを称えるけど、昔みたいに「私達は普通じゃないけどこれも悪くないよね」っていうような同情はしなかった。
ここが個人的に一番悲しかったなぁ。
アランは本当に孤独になっちゃった。コンピュータールームの電気を消す最後のシーンに、過去の友達とコンピューターを重ねていたけど結局孤独と気づいてしまったアランの寂しさを感じた。
そして孤独のまま自殺した。
それにしても彼の功績が公で称えられるようになったのが2013年っていうのがびっくり。
映画にもなってアランもやっと報われたかな。
この映画は華麗なるギャツビーみたいな自分語りで過去の回想みたく進むんだけど、それに気づくのが遅くて、こんがらがった。
僕の頭が弱いせいなんだけどもうちょっと分かりやすくしてほしかった...
ので星4で!
でも内容は本当に良かった。
なるべく前情報入れずに見た方がいい。 戦時中に活躍した暗号解読の天...
なるべく前情報入れずに見た方がいい。
戦時中に活躍した暗号解読の天才数学者の話だと思ったら、ゲイの人権問題がテーマの話だった。
ゲイというだけでその才能を十分に生かせず死んでしまった天才。
当時のイギリスの女性差別やゲイ差別がここまで酷かったとは驚いた。
ヨーロッパといえどそこまで先をいってるわけではないのは、フランスと同じだ。
この事実が50年も国家機密として表に出ず、彼の死後最近彼の名誉回復が成されたわけだが、生前の彼は苦しみ続け、結局社会の生き辛さが彼を自殺に追い込んだという事実が、国の愚かさを露呈。
昨日今日の話だが、渋谷区が同性愛結婚を認めた事に対し、田母神が、国が壊れていく、などと馬鹿な発言をした。
他の人のレビューでは、戦争の愚かさを表現してるとか、謎解きが足りないとか言ってる人がいて、的外れ甚だしい。
戦争の愚かさ?アランがいつ戦争の愚かさ語ったよ?笑
謎解きが足りない?謎解きはこの映画のテーマじゃないんだよ。だから謎解きシーンはクライマックスにきてないじゃん。
もう本当何を見てたんだ。同じ映画を観たとは思えないよ。きっと田母神も謎解きが足りないとか言うんだろうな。
謎解きが物足りない
わくわくしてとても面白かったけれど、この主人公へ感情移入することは到底無理なので、個人の内面的な同性愛問題よりもう少し謎解きや戦時中の国全体の問題に寄ってほしかったな。エニグマについて詳しくないけれど、膨大な可能性をしらみつぶしに当たるよりパターンをみつけてそこだけに焦点を当てる今回答えとなった方法は基本中の基本ではないの?英国一の頭脳がそんなに時間かかるの?と疑問。そこらへんの謎解き要素がちょっと物足りなかった。
あっけない、これが見終わって私が最初に思ったことです。 少年時代、...
あっけない、これが見終わって私が最初に思ったことです。
少年時代、エニグマ解読、現代と
時代が転換するのに違和感がなくスマートでした。エニグマ解読までが少し長く単調であったように感じます。解読のヒントがあっけないもので、解読シーンも彼らの2年間の労働をうけ疲れてやっとか、という感じで喜びというよりも安堵みたいなものを強く感じました。
あっけなさを感じた他の理由は彼の人生があまりにも痛みの多いが、その痛みに似合う結末ではなかったからです。
エニグマ解読の採用面接?のときの生き生きした姿と解読し秘密を背負うことになり多くの苦しみを抱えた姿は同じ人物とは思えないくらいの変化でした。
それを演じきった演者は素晴らしいと思います
普通ではない人生、人とは変わった趣向に対する追求、隠し通さなければならない秘密、彼女のためとはいえ愛する人を突き放さなければならない事実、友人の死
彼が抱えた苦痛の大きさゆえ、自殺という結末は彼を癒したのかもしれません。戦争終結のために自ら、誰にも言えない秘密や人の命を選別しているかのような重さを抱えて、天才は生きづらい........
「あなたが変わっているから世界はより素晴らしい」
彼が有罪判決を受けた後に、彼女が彼を訪れて言った言葉です。
私としては彼女と共に、秘密をもつ苦痛を共有して生きていって欲しかった。
伝記物なので、どうしようもありませんが。
共に観た友人は、少年時代の他に彼が幸せだった時はあったんだろうかと言っていました。
彼の幸せとはなんだったんでしょうか。
(2015/03/30 TOHOシネマズ梅田)
偽らなければ生きられないのか
僕はアラン・チューリングという人物の名前を本作で
初めて知った訳だが……コンピュータの始祖を築いた上、
第二次世界大戦の終結を推定2年縮めたという大人物が、
こんなにも悲愴な形で人生の幕を下ろさなければ
ならなかったという実話に半ば愕然とさせられた。
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イミテーション(模倣)という言葉は、
機密情報を暗号化するエニグマを指すと同時に、
自身の心を偽らざるを得なかった主人公
チューリングをも指していたのだろう。
エニグマ解読が戦争の勝敗を賭けた本気のゲームであったよう、
同性愛がわいせつ罪に問われる時代においては、
チューリングが同性愛者である事を隠し通す事もまた、
社会で生き残る為の本気の“ごっこ遊び”だったのかもしれない。
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思い返せば本作には様々な“イミテーション” があった。
女は家庭を守るべし、仕事もあくまで男の補佐に回るべし
という固定観念が幅を利かせていた時代、ズバ抜けて
賢いジョーンが男に混じって暗号解読に加わるには
幾つもの偽装が必要だった。
ソ連の二重スパイやMI-6のミンギスは偽る事こそ生業だ。
目的の為、彼らは巧みな振舞いで相手の懐に潜り込んでいた。
最も規模の大きい “ごっこ遊び” はあの恐るべき『ウルトラ』計画。
暗号解読をドイツに悟られない為、生かす/死なす人間を
選別するという、文字通りの“機械仕掛けの神”。
正気を保つ事にも苦労しそうなプロジェクトだが、
親しい人に悩みを打ち明けることすらできない。
戦争終結の為に暗号を解いたのに、不条理にすら思える責め苦だ。
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大きな目的を果たす為、本当の自分をひた隠し、
波風立てぬよう、『普通』を演じる。
世渡り上手な人間ならばそれもできるかもだが、
本心を偽って生きるのは辛く苦しいもの。
気の毒なほど生真面目だったチューリングのような
人間にとって、それはどれほど過酷な事だったか。
チューリングは己を隠す事をやめた。
自分を認めてくれた仲間たちとの努力の結晶であり、
不遇の少年時代を救ってくれた愛しいクリストファーを守る為。
それゆえ彼は世間から犯罪者のレッテルを貼られ、
望んでもいないホルモン投与を強制され、挙げ句、自殺した。
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「他人と違う風に考えるのは考えていないということなのか?」
チューリングが刑事に投げ掛けたあの言葉は、人や社会は
なぜ異なる価値観を卑しいものとして排除しようとするのか、
という深い苦悩が込められた言葉だったのだろう。
終幕の間際、打ちのめされたチューリングに対し、
ジョーンが語った言葉が心に残っている。
「あなたが普通じゃないから、世界はこんなに美しい」
なんて優しい言葉だろう、と思う。
自分の価値観と他人の価値観が共存可能な世の中こそが
最も創造的で、最も平和な世界なのかもしれない。
残念ながら、他人の価値観を認めるのが難しいから
未だに世の中うまくいかない訳だけど。
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エニグマ解読を巡るサスペンスとしても面白かったが、
チューリングという興味深い人物の伝記としても、上述のような
現代に通じるテーマを描いたドラマとしても観られる。
複雑な後味を残す秀作でした。
<2015.03.21鑑賞>
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余談1:
文脈に沿わなかったのでここに書く。
僕は『裏切りのサーカス』『スター・トレック』
『ホビット』でしか彼の演技を知らなかったのだが
(暴竜スマウグ様は勘定に入れていいの?)、
B・カンバーバッチのオスカーノミニーには納得。
奇をてらった演技ではないが、コミュニケーション障害
を抱えた人間の閉じた雰囲気、時折その障害の枠を
飛び越えて見せる大きな感情の波が印象に残る。
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余談2:
理解の為、同性婚について少し調べてみた。
世界で初めて同性婚が法的に認められたのはオランダ
だそうだが、それも2001年になってからのこと。
本作の舞台イギリスの場合は、法的な婚姻ではないが、
手続きを踏めば同性でもそれに近い権利が認められる
“シビルパートナーシップ法”が2005年に導入されたそうな。
同国で同性婚が法的に認められたのはつい昨年(2014年)。
本作はそういう点でもタイムリーな題材だったのだろう。
ちなみにこのレビューをちんたら書いている間、
3/26に渋谷区で同性婚を認める条例(上記のパートナー
シップ法に近い位置付けらしい)が可決されたとのこと。
世の中もゆっくりゆっくり、色んな人間を理解しよう
という方向に前進してるのかねえ。
おすすめ
「私は人間か?マシーンか?人知れず多くの命を救った英雄か?それとも犯罪者か?」
コンピュータの父とも呼ばれる数学者、アラン・チューリングのこんな問に簡単に答えられる人はいないだろう。
連合軍の救世主となりうる暗号解読の切り札、チューリングマシンを完成させながら、その解読精度の高さゆえにドイツにも、祖国の軍隊にも秘密として守り通さなければならないという葛藤。ホモセクシュアルであるという事実をひた隠しにしなければならない苦しさ。そのために、自分を悪者にしてまで大切な婚約者に辛い言葉を吐かなければならない、思い決断。
主役の俳優さんの見事な演技力には脱帽しました。
アランの子供時代の子役さんも負けず劣らずお見事。校長室で叫び出したい衝動を抑えきって「自分には関係ない」と乾いた言葉を出すシーンなどは、素晴らしいの一言。
事実に基づいたストーリーだから仕方ないかもしれませんが、あまり後味のいい終わり方ではないので☆ひとつ減です。
秘密
第二次世界大戦中、政府に召集されたアラン・チューリング率いる数学の精鋭達がドイツ軍の誇る世界最高の暗号「エニグマ」の解読に挑む物語。
予告編を観る限り、この作品は戦時中に活躍した者たちの挫折と栄光を描いた、ありがちな戦争映画であると予想していた。しかし蓋を開けてみれば、それだけではなかった。本作は、言うなれば「名も無き英雄アラン・チューリングの物語」であると、観終わって実感した。
本作最大のキーワードは、「秘密」である。まず、エニグマの解読に成功したというチューリング一行の偉業を描いているが、そもそもこの一大プロジェクトは国家機密とされていたのである。エニグマを解読したことによって幾多の戦争を勝利へと導いたにも関わらず、その偉大な功績は死後何十年もの間、誰にも知られることはなかった。よく「戦争を風化させてはならない」という言葉を耳にするが、こういった偉人の忘れ去られた功績が今なお存在するのはれっきとした事実であり、彼らを讃え、後世に伝えることが戦争を知らない私たちの世代の役目であると、改めて痛感した。
そして本作でさらに「秘密」とされていたのはチューリングが同性愛者であったことである。寄宿学校に通っていた若かりし日のチューリングは周囲から「変人」扱いされ酷いいじめを受けていた。そんな彼を救ったのは、彼の唯一の理解者にして親友であるクリストファーだった。チューリングは彼に触発されて暗号の世界にのめりこんでいき、いつしか恋心を抱くようになる。自分の気持ちを暗号文に託し告白しようとするも、その矢先にクリストファーは結核で帰らぬ人となる。
最愛の友を亡くしたチューリングは、幾度と無く人生に絶望し、「死」を意識したことだろう。しかし、彼は屈することなく、常に「変人」であり続けた。その裏には、かつてクリストファーがチューリングに言った台詞があった。“Sometimes it is the people who no one imagines anything of who do the things that no one can imagine.”(「誰にも思いつかない人物が、誰にも思いつかないことをやってのけたりするんだよ」)この台詞はチューリングが最期を迎えるときまで、彼の生きる糧として、自分に言い聞かせていたことだろう。
余談になるが、私がこのシーンで想起したのは、今年のアカデミー賞で本作が脚色賞を受賞したときのスピーチである。受賞した脚本家のグレアム・ムーアは、16歳のときに自ら命を絶とうとしたと告白した。しかし彼はその苦難を乗り越え、オスカーのステージに立つという夢を叶えたのであった。“Stay weird. Stay different.” 世界中の子どもたちに捧げたこの素晴らしいスピーチは、何千万人もの子どもたちを勇気づけたに違いない。劇中のクリストファーの台詞は、ムーア氏の経験に基づいて、書き上げたのであろう。
戦後、チューリングは同性愛の罪で告発される。彼の功績を世に明かしていれば、罪は免除できたのかもしれない。しかし国家機密であるが故に、彼の偉業は誰にも知られることなく、犯罪者となった。「エニグマの解読」と「同性愛」という二つの「秘密」に生涯悩まされたチューリング。やがて精神を病み、名も無き英雄は自ら命を絶つのであった。
孤独
暗号を解いたときのシーンには興奮した。課題や問題に直面し、必死にあがき続けて、やっと達成できた喜びは物凄いはず。
それなのに、この興奮をなかったことにしなきゃいけないもどかしさもまた計り知れないことなのだろうと思う。
やっぱり人は誰かと何かを共有したい生き物なんじゃないだろうか。
だからこそアランは、誰にも理解されず孤独を感じ、秘密を抱えることでさらなる孤独に苦しみ、孤独からの救いを求め、マシンに没頭し続けたんじゃないかと思う。
博士と彼女のセオリーのレッドメインよりも良い♡
カンバーバッチの演技が良かったなぁ〜
私としては、博士と彼女のセオリーのレッドメインよりも良かったわ。
天才ゆえのとっつきにくい感じを彼女の助言で、彼なりに努力して上手くやっていこうと行動に出た所とか微笑ましかったです。
今では何てことない同性愛で捕まり、ホルモン治療されて、最後は自殺なんて、すごい才能の持ち主なのに悲しすぎる結末でした。
「アメリカン・スナイパー」に続く戦争物。あらゆるかたちで戦争に携わ...
「アメリカン・スナイパー」に続く戦争物。あらゆるかたちで戦争に携わって、伝説と呼ばれたり、偉業を成し遂げたりする。事実に基づく話だからすごい。戦争が終わって体が無事でも、最期はせつない。これも戦争なのか。
よかった
コミュ障が頑張るいい映画だった。暗号の解読に成功して、その運用にまで話が及んでいてなるほどと思わされた。あのコミュ障は、ゲイであっても、そんなに好かれるタイプではなさそうで、ゲイだからコミュ障というわけではなく、どこにいても思い上がりは捨てられずハッピーにはならないタイプで、気の毒だった。
すごく誠実でしっかりした作りの映画だったのだが、見終わってすごくどんよりした気分になる。
巨大なパソコンの元祖みたいな機械はかっこよかった。あの機械を作るためなら、電気技術者がチームにいた方がよかったのではないだろうか。
ナチスの定型文から検索ワードを絞ることがヒントになると言う描写があって、なんとなく分かるけどもう少し解説が欲しかった。あとクロスワードパズルでなぜ適性を見分けることができるのかもう少し解説して欲しかった。
天才の生き様
10万ポンドの大金をかけたマシンもなかなか結果が出ず、一度はクビを宣告される。
その窮地を救う仲間には感動するが、前例のないことや新たな創造のための初期投資についてまわる問題は、今も昔も変わらないとも思ってしまう。
また、ジョン•クラークの仲間入りをきっかけとした変化には、天才であっても不可欠な周囲の助けを見る。
エニグマを解読する過程や、解読した後も下手にそれを悟られる行動を起こせないというもどかしさ、自殺まで追い込まれてしまう同性愛の問題など、歴史が知られて学びも多い映画。
アカデミー作品賞を受賞できなかった理由は・・・
テーマは2つある。
1つは解読不可能といわれたナチス・ドイツの暗号エニグマの解読に成功した数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の半生と解読成功へのプロセス。
2つ目はチューリング自身がそうであった同性愛禁止法(英国では彼の死後廃止されたが)への問題提起。
全体的には監督・出演者の多くがヨーロッパ出身が多いためか落ち着いた雰囲気で見る者に充足感を与えてくれる良品である。
しかしながらいくつかの点で掘り下げ不足が目立った。
これをクリアしていたら作品賞も受賞できたのではと非常に残念です。
1.エニグマ解読の困難さの場面をもっと多く描いておく必要があった。
あまりにも簡単に解読に結びついてしまったような印象を与えてしまっている。
2.チューリングの同僚で後に許婚者になるジューン(キーラ・ナイトレイ)がどういう人物(家族構成や過去の職歴など)なのかもう少し肉付けが欲しかった。
同性愛禁止法についてつっこんだ表現はされていないが、これは映画興行上の配慮だと解釈した。
切ないマシン。
観終えた時、なぜこんなに切なさが込み上げてくるんだろうと
数学者の物語からは想像もつかない感動が押し寄せてくる作品。
G・ムーアのアカデミー脚色賞受賞は当然の素晴らしい脚本。
天才数学者の数奇な運命を要所要所で巧みに取り上げ、
彼の人となりを短い時間の中で明確に浮かび上がらせている。
A・チューリングは現在のコンピューターの父と謳われる人だが、
その最高傑作の功績を人々は50年以上も知らされていなかった。
ドイツ軍が誇る暗号機“エニグマ”の解読。これを成功させ
戦争終結を早めるも、彼の人生は豊かな晩年にまで至らなかった。
今作では彼の一生を少年期と現在を行き来する形で解説していくが、
マシン(のちのチューリングマシン)につけられた名称の真相といい、
パズル解読からの精鋭集めといい、暗号オタクやスパイが混合する
チーム内で解読法をゲームと名付けるアランの変人ぶりが面白い。
コミュニケーション障害を抱える彼の秘密は仲間内にも知れ渡るが、
そんな彼と仲間を融合させるジョーンの存在はかなり重要だった。
こういった天才にありがちの変人ぶりは、他者を度外視して突き進む
性質に見られるが、アランもまったくその部類で仲良しはマシンだけ。
そんな彼の性格をより人間に近づけたのが彼女の役割で、それにより
彼は苦しむことにはなるが、よりよい人間性を身につけることとなる。
どんな天才もマシンではないことが、青年期のアランが想いを寄せた
生徒への描写で語られると、ラストの涙目の嗚咽に胸が苦しくなるが、
それにしても同性愛への偏見には凄まじい歴史があったのを思い知る。
もし違う時代に生まれていたらとその功績の大きさゆえ思いは募るが、
数奇な運命も苦しみだけではなかったことがしっかりと描かれている。
(カンバーバッチがまたよく似合っている。豪華共演俳優も演技で応酬)
すぐに席を立てないほどの感動
エッジの効いた、躍動感いっぱいの脚本。
戦争終結を早めた「功績」が、戦後70年もたってようやく日の目を見たことに、まず驚く。主人公チューリンング自身の過去がじわじわと明かされるにつれて、個人的な「秘密」のために彼がたどらなければならなかった非業の運命、国家の非情さ、人格を抹殺されていった有能な人たちの真実が胸に迫り、観終わってもすぐに席を立てないほどの感動に襲われた。
アカデミー賞はもっと多部門を受賞してもいい。いまだからこそ、言いにくいこと、正視しづらいこともすべて白日にさらして、闇の中で41年の生涯を閉じた「功労者」を陽のあたる場所へ連れ出すべきだろう。
全115件中、81~100件目を表示