イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密のレビュー・感想・評価
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孤高
イギリスの天才数学者であるアラン・チューリッヒの壮絶な人生を描いた作品。
主演にはベネディクトカンバーバッチ、助演女優にキーラ・ナイトレイの豪華ブリティッシュ俳優陣で描かれた。
このアランはビューティフルマインドのナッシュ教授と同じ数学の問題を解こうとしたらしい。
アランの現在、幼少期、世界大戦時の中でも、特に世界対戦の時に焦点を当てつつ、相互に彼の人生を紐解いていくように描かれた。
美しい映画だった。
最後の最後の、アランたちが暗号を解き明かし、第二次世界大戦の終了を2年も早め、1400万人もの予測された犠牲を減らした。
それが公になったのは、70年ほど経ってから、この偉業、偉人は知られることがなかった。
"想像もしてないような人物が、誰にもできない偉業を成し遂げる"
3回ほど出てきたこのセリフ。
大過去→過去→今で、
クリストファーからアラン
アランからジョーン(キーラ)
そして
ジョーン→アランへ。
人と違う、違うと虐げられてきたアランが成し遂げた解読。
にもかかわらず、そのあとの結末があまりにも痛酷じゃないか。
彼の寂しさは一体誰が埋めたのだろうか。
映画ではキーラが結婚しつつも、アランの裁判期に現れ、彼を抱きしめ、席に座らせ。
そこから
私は電車に乗って、
男からチケット買って
ここにきた。
この美しい世界が存在しているのは普通でないあなたがいたから。
そういった。
最後アランは去勢のホルモン剤を投与され、最後はリンゴに青酸カリをつけ自殺。
今のコンピュータの土台を作ったアランに敬意を称してか、アップルのロゴは一口かじられたリンゴが光って、それは今なお世界で愛される。(という説もあるが実は違うらしい)
なにに心を動かされたのか。
アランという人間の、成し遂げたことの大きさ、そしてそれが人知れずにして成し遂げられたこと。
戦争が終わり、普段の生活が戻り、愛する人とゆっくり時間を過ごして、学校に通い、電車に乗り、美術館にいき。
世界は美しくて、人々は美しい。
そんな世の中を、残したのが彼。
それでも彼は人知れず、
同性愛の罪に問われ、
罪を侵した教師のレッテルを張られ、
ホルモン投与をさせられる。
なんという扱いなのか。
ただ少なくともその劇中では政府への怒りや憎しみという気持ちが見えてこなかった。
そんな彼が成し遂げた偉業と彼の死に様の儚さ、最後には一人で、一人じゃなかった彼の寂しさがあまりにも伝わってきたからだろう。
個人的にキーラナイトレイの最後のシーンは本当に好き。
そしてベネディクトカンバーバッチは全体を通して見事に天才科学者の孤高と奇妙さを再現した。
もうひとつの謎と、林檎のロゴ
前に、バラエティ番組の企画で、東大と京大の学生に、尊敬する人物は誰かとアンケートを取ったところ、誰一人、アラン・チューリングの名前を上げた学生がいなくて、(確か)東大の先生がたいそう嘆いていたのを覚えている。
現在のコンピュータの原型となる演算機を発明・開発した人物なのにということだ。
まあ、クイズ番組で高得点を連発する卒業生を尊敬する人物として上げてる学生が結構いたので、嘆きたくなる気持ちも分からないではないと思った。
この作品では、主に、連合軍を勝利に導くため、エニグマを解読する演算機の開発に心血を注ぐアラン・チューリングの姿が描かれていて、この完成がなければ第二次世界大戦の終了は、更に数年後になったかもしれないと言われているので、スリルも感じられる。
そして、その後のコンピュータの発展を考えると、もし、アラン・チューリングが自殺していなければ、ノーベル賞を取っていたのだろうかなど想像も膨らむ。
映画では、同性愛が法律で禁じられていた当時のイギリスにあって、同性愛を疑われ、世間の厳しい目に晒されていたことや、政府の強制治療にフォーカスがあたってるように思うが、大戦の緊張が最高に高まってるなか、演算機を開発する強い気持ちを持った人物が、そんな程度のことで自殺するほど心を病むだろうか。
これは僕の疑問だ。
イギリス政府は近年、アラン・チューリングに対する扱いは間違いだったことを認め、社会的復権がなされたので、映画は、これをベースしているように思う。
しかし、実は、自殺の要因は、自身の開発した演算機を用いても尚、数学の難題リーマン予想を証明出来なかったからではないかとも言われている。
リーマン予想は、素数の出現はランダムではなく一定の法則性があるとする150年以上前に数学者リーマンが唱えた数学の予想なのだが、今もって証明を拒む難題だ。
数学の証明を拒む難題はいくつかあって、多くの数学者が挑み精神を病み、自ら命を絶った人も珍しくはない。
ビューティフル・マインドの主人公のナッシュ教授もリーマン予想に挑んだ数学者のひとりだ。
アラン・チューリングは、どうも、リーマン予想は間違いだと証明しようとしていたらしい。
そして、自ら開発した演算機で「簡単に」、それを証明可能だと考えていたようなのだ。
しかし、この数学の難題は、これをも、いとも簡単にはねつけてしまう。
何度も何度も何度も何度もプログラミングを変更してもだ。
そして、精神を病み、林檎に青酸カリを塗り、それをかじって絶命してしまう。
多くの著名な数学者が飲み込まれた渦と同じだ。
僕は偉大な数学者の苦悩を考えるに、こちらの方がアラン・チューリングの死の理由としてフィットするように感じる。
エニグマの解読なんて、大した命題であったはずはない。
数学の難題こそがチャレンジの対象であったと思うのだ。
そして、そのひと口かじられた林檎は、アラン・チューリングに敬意を込めて、あるハイテク企業のロゴになったと噂されている。
アップルだ。
アップルは公式にこれを認めてはいないと思うが、スティーブ・ジョブズをはじめ創業者達は、そんな敬意をアラン・チューリングに表したに違いないと想像はしたくなる。
東大生や京大生が名前を挙げなくても、やはり、アラン・チューリングは偉大だ。
普通じゃないこと
アラン・チューリング氏のことはこの映画を観るまで知りませんでした。
この映画は暗号の解読に至るまでの話ではありますが、それだけが肝ではありません。
チューリングという、人とはちょっと違うゆえに生きづらく孤独を抱える一人の男の半生を描いた作品でした。
「時として誰も想像しないような人物が想像できない偉業を成し遂げる」
「あなたが普通じゃないから世界はこんなにすばらしい」
この映画にはたくさんの名言が出てきます。
多様性を認めることが回り回って世界を良くする、みんながそんな風に思える世の中であればいいなと思います。
それにしてもベネディクト・カンバーバッチって天才の役が本当に似合います。
今度のエジソンズ・ゲームではまた違った天才ぶりを見せてくれるでしょうか?
悲しき天才アラン・チューリング
「めちゃくちゃ面白い」という知人からの紹介で鑑賞しました。解読不可能と言われた「エニグマ」の解読を成功させた天才数学者アラン・チューリングを描いた作品です。
結論から言うと、めちゃくちゃ面白い。戦争シーンがほとんど描かれない戦争映画というと、2019年公開の日本映画「アルキメデスの大戦」を思い出します。あの映画も天才数学者が戦争に立ち向かうストーリーでしたね。
この映画ではいかにしてアランがエニグマの解読をしたかが描かれますが、エニグマ暗号を発明したドイツではなくアランの属するイギリス軍上層部が敵であるかのような描かれ方をします。アランのやっている作業の重要性を理解できず、アランを解雇しようとしたりスパイ容疑をかけてきたりします。このあたりの展開も「アルキメデスの大戦」に近いですね。最初はいがみ合っていた仲間と和解して協力したり、様々な困難を仲間の協力やとっさの機転、持ち前の発想力で乗り越えていく展開は胸が熱くなります。
そしてあの衝撃のラストシーン。あまりの衝撃にポカンとしたままエンドロールを終わりまで眺めてしまいました。決して後味が良い終わり方ではありませんが、最高のエンディングだったと思います。
また、この映画は「エニグマ」に対するイギリスのその後の対応やチューリングのその後について非常に簡略化して描いているため、映画鑑賞後に調べてみると更に楽しめると思います。
例えばエニグマの解読を最高機密として戦争が終わってからも隠し続けた理由として「イギリスがエニグマ暗号機を「絶対に解読できない暗号機」として販売して大儲けし、更に世界中の秘密通信を傍受してイギリスが世界のトップに立とうとする陰謀があったから」だという逸話があったり、チューリングの自殺は「青酸カリの服毒自殺」であったり(作中に青酸カリが登場するシーンがある)。
歴史を知った上で観ると、更に映画を深く知ることができるという作りこまれた内容になっています。
本当に面白い映画でした。この映画は色んな人に観て欲しいオススメの映画です。
普通が嫌いな人は観るべき1本
普通じゃない人の悲劇とその偉業の話だと思います。
劇中で三回出てきた台詞が素敵で、思わず英語でメモしました。
"Sometimes it is the people who no images anything of who do things no one can imagine."
とても勇気づけられる言葉です。
他人と違う事は悪いわけではないというメッセージが込められています。
映画ファンとして「Ex Machina」にチユーリングテストという台詞があったのも思い出し「あああれか」と納得しました。
二本立て二本目。一本目と似た天才数学者のお話。実話の分、こちらに重...
二本立て二本目。一本目と似た天才数学者のお話。実話の分、こちらに重みあり。「アルキメデスの大戦」はこの実話にヒントを得たのかも。
有名な暗号「エニグマ」解読の話。やった!と思ってからの二転三転が凄い。これ本当に実話?事実は小説よりも奇なりを証明するかのような話。
いやー勉強になりました。
第2次世界大戦時、ドイツ軍が世界に誇った暗号機エニグマによる暗号の...
第2次世界大戦時、ドイツ軍が世界に誇った暗号機エニグマによる暗号の解読に成功し、連合国軍に勝機をもたらしたイギリスの数学者アラン・チューリングの人生を描いたドラマ。
すごかった…
見終わったあとのなんとも言えない感情が…
こんな人がいたなんて信じられない…
ベネディクト・カンバーバッチもすごかったし。
あのマシンも凄すぎる。
クリストファー…
やっぱり天才には何かあるんだなと思った。
普通とは
「時として誰も予想しないような人物が想像も出来なかった功績を成し遂げる」ー
当時世界最高峰の暗号とされたドイツのエニグマ。
エニグマ解読を任され、果たしたチューリングの生涯を描く本作。
ストーリーは大きく分けて3つ。
チューリングの幼少期、
エニグマ解読までの道のり、
そして戦後の人生を入り交ぜながらも
巧みに描いている。
天才ゆえの苦悩や後のコンピュータへ繋がる暗号解読機開発となるストーリーがメインにありながらも、
「普通とは何か」を常に問いかけてくる。
チューリングが誰にも称えられることもなく、
ホルモン治療を経て41歳の若さでこの世を去った。
しかし2013年に女王陛下より勲章を授与されたことにより彼の生涯と功績が表沙汰となる。
実に60年後のことである。
変わり者として扱われる主人公を通して
何が普通で何が普通でないか、
普通と違うことが悪いことなのか、
必ずしも普通が普通でないことを考える必要があることを改めて気付かされる。
・自分の考え方が変わると周りも変わってくれるように感じるのは嬉しい...
・自分の考え方が変わると周りも変わってくれるように感じるのは嬉しい
・ヒントをつかんだ瞬間は本気で興奮した
・自分は何者なのかって考えると何もなくて、秘密が公にできればその虚しさも消えるのに
チューリングの名を全ての人が知るべきだ。
コンピュータサイエンスのノーベル賞はチューリング賞。
「チューリング」は、本作の主人公であるアラン・チューリングから取られた。
本作は、チューリングの生涯を、
・第二次世界大戦におけるイギリスの対独戦
・チューリングのエニグマ解読の功績
・同性愛者であるが故の不遇な人生
3つに焦点を絞って過不足なくまとめた、という印象。
アラン・チューリングを知っている人(プログラマや数学に嗜みのある人)は楽しめるはず。僕は、エニグマの解読過程の描写をニタニタしながら観ていた。チューリングを知らない人は、とりあえずこの映画を見て、知れ!(理由は後述)
また、彼の不遇な人生を、この映画を通して初めて知った。多大なる功績を納めた(決して言い過ぎではない)人なのにね・・・。同性愛者という理由だけで、人を迫害してはならない、と思った。彼ら(彼女ら)は、同性愛者というだけで生き難いはず。それに追い討ちをかけるように迫害しちゃいけないね。
チューリングのことを知らない人もこの映画を見なければならない。なぜなら、チューリングは現在のコンピュータの生みの親だから。みなさんが使っているiPhoneだって、彼の功績なしには今ここに存在していなかったかも知れませんよ?
本作中では、チューリングのコンピュータ発展における功績についてはあまり語られていない。まぁそれは仕方ない。だってとても映画にできないもん、観念的すぎて、難しすぎて・・・とても映像化はできないwww。その功績は計算理論面での貢献。コンピュータサイエンスという学問分野では、多くの研究が、彼の理論を基礎に進められている。だから「生みの親」なのだ。
最高… 絶対みて… これが実話だなんて… 鑑賞後ネットでアランチュ...
最高…
絶対みて…
これが実話だなんて…
鑑賞後ネットでアランチューリングについてめちゃくちゃ調べてしまうな
アカデミー賞を取った後の脚本家のスピーチもくっそ感動する
正しい人が公平に認められるのにこんなに時間がかかるとは凡人が多い世の中に天才が生きるのは本当に難しいんだろうなぁ
価値観や人格の多様性と同性愛者への理解
第二次世界対戦の裏にこのような偉業があったとは知りませんでした。
やはり本当の天才は常人には理解することが難しいのかもしれません。
価値観や人格の多様性、同性愛者への理解など考えさせられる映画です。
国益の名のもとに
予告で流れる「英雄か、犯罪者か」とはこういう事だったのか…。
『ダンケルク』の彼らが浮かんできてしまった。
どんな勝負も、戦略がなければ勝てない。
結果として、最後のテロップにあるように、大勢の命を救ったのだけれども。
そりゃ、封印しなければ、助けられなかった兵士や民間人の遺族から袋叩きに合うよ…。英国にとっても、闇歴史だったんだろうな。
さらに、つきつけられるスパイ合戦。そのために利用される人々。
そもそも、彼らの提案を採用するかどうかの決定は、彼らとは関係のないところで行われているはずだ。
結局は、釈迦の掌の中で踊っていただけか。
そして、彼自身も一番大切なもう一人を手放さなければならなくなる、その人の安全のために。
大きな代償を払いつつ、なかったことにされる実績。最終責任を取る立場にはないものの、純粋な彼の魂は、自分にすべての責があるかのように自分に問いかけ続ける。「私は、神か、悪魔か、英雄か、犯罪者か」
自分が機械だったらどんなにか楽だったろうに。
コンピューターの誕生秘話であり、第二次世界大戦での偉業の話であり、人との繋がりの話でもある。
ジョーンが、アランの偉業を称えて言う言葉がキーワードとして何度か出てくる。感動的な言葉だ。
この映画は、アランを称える映画だから、当然繰り返される言葉であり、今を一生懸命生きる私たちに勇気をくれる言葉でもある。
けれど、日々、自閉症スペクトラム障害(アスペルガー障害含む)と、その近縁の困難を抱えていらっしゃる、多くの方がたと出会っていると、若干の違和感が禁じ得ない。
「別に偉業を成し遂げなくたって、貴方達は存在しているだけで素晴らしい」って言いたくなる。
アランが天才風を吹かせて高飛車なのは、アスペルガー特有の症状ではない。 ずっと馬鹿にされ虐げられてきた者の、反動形成だ。
事実を事実として周りの空気読めずに言っちゃって、何がまずかったのか理解できないところはアスペルガーの特徴だけれど。だから、ジョーンに諭されて、納得すれば、 かんたんにその教えに従ったりする。そのあとのジョークが、そのあとの展開につながっていて、うならさせられる。
ラスト、アランがクリストファーのことを「友達じゃない」と繰り返す。
うん、友達なんかじゃない。もっと大切な魂の片割れ。
たんなる性的志向じゃなく、もっともっと深い魂の結びつき。当時の風潮としては全力で隠さなければいけない想い。
とはいえ、クリストファーのことを想うことを否定されて”治療”させられたら、自分の存在そのものの否定だろう。
林檎に青酸カリをつけて自死されたとか。
事実なのか脚色なのか知らないけれど、映画の途中の、林檎のエピソードを思い出すと胸が苦しくなる。
人が大切にしているものを奪っちゃいけない。
人を人として信じてあげること、それは人にしかできない
AIが恐らくついに花開こうとしている今、それをどう使い世界をどう動かすかは、人間に突きつけられた最後のテーマと言えると思う。
この映画は教えてくれる、「人を人として信じてあげることは、人にしかできない」と。「モンスター」のような異端児の彼をイジメから救って信じてくれた彼の中学の親友、チューリングを人として信じたフィアンセ、そして彼の仲間。
そしてその信頼が結実した結果、英国が成し遂げたナチスドイツの暗号解読という奇跡。そのきっかけが、実は恋だったという、いかにも人間らしいストーリーが、コンピュータ開発の原点にあったことを、私はこの映画で初めて知った。
人はそれぞれが他人にはなかなか言えない、人とは違った面を持っている。それを感じ取り、認めあってこそが人間であり、だから我々はAIという「モンスター」と、これからどう付き合っていくかを決めないといけない局面に今来ていると思う。
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