「謎解きでもなんでもなくマイノリティがテーマ」イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 Fさんの映画レビュー(感想・評価)
謎解きでもなんでもなくマイノリティがテーマ
最初に言っておくとこの映画は謎解きとかどんでん返しとかそういう映画じゃないです。
伝記です。
マイノリティという言葉は劇中に一度も出てきませんがこれがこの映画の軸です。
アランは同性愛者で恐らくアスペルガー症候群の天才数学者。マイノリティという言葉そのものって感じ。
そんなだから最初は鼻つまみものなんだけどジョーンというもう一人の天才と出会って彼女の助言もあってか変わっていく。
アランの台詞の端々に人をバカにするようなものがあることからわかるように、アランは自分と同等以上の頭を持った人間じゃないと相手にしないんだろう。
結核で死んじゃった友達とかジョーン位だったんじゃないかな。
だからジョーンの説教も時間の無駄と言わずに聞いて、ちゃんとリンゴを買っていった。微妙なジョークも覚えて笑
で、友人関係は何となく順調。
エニグマを解読してからが問題だった。
アラン達はエニグマを解読されたことをドイツに悟られないようにまず、500人の市民を見捨てた。その後もちょくちょく見捨ててる。
国家という枠組みの中にある、ある種のマイノリティを見捨てちゃった。
正しい決断だし、結局は良いことなんだけどカフェの窓から見える足を無くした兵隊さんを見るジョーンの目はちょっと悲しそうだった。
戦争に勝利した後、MI6の人に全ての証拠を燃やすように言われる。
もちろんこれはアラン達の功績も全て燃やすことになってしまう。
でも彼らがなにも言わずに従ったのは国家のためだから。
国家のために市民を見捨てた彼らにはなにも言えなかったんだと思う。
その後、みんな別々の人生を歩く。
アランは一人でコンピューターの改良をしていた。
同性愛の罪で起訴されたアランの元をジョーンが訪ねる。
彼女は"普通"を手にしていた。
アランはそれを羨ましそうに言った。
ジョーンは、「普通を手に入れられたのは普通でないあなたのお陰」とアランを称えるけど、昔みたいに「私達は普通じゃないけどこれも悪くないよね」っていうような同情はしなかった。
ここが個人的に一番悲しかったなぁ。
アランは本当に孤独になっちゃった。コンピュータールームの電気を消す最後のシーンに、過去の友達とコンピューターを重ねていたけど結局孤独と気づいてしまったアランの寂しさを感じた。
そして孤独のまま自殺した。
それにしても彼の功績が公で称えられるようになったのが2013年っていうのがびっくり。
映画にもなってアランもやっと報われたかな。
この映画は華麗なるギャツビーみたいな自分語りで過去の回想みたく進むんだけど、それに気づくのが遅くて、こんがらがった。
僕の頭が弱いせいなんだけどもうちょっと分かりやすくしてほしかった...
ので星4で!
でも内容は本当に良かった。