劇場公開日 2015年3月13日

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「人生は『もし』と『嘘』で出来ている」イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 にゃらんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人生は『もし』と『嘘』で出来ている

2015年3月25日
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Lifeという雑誌が100周年記念で、一般公募した『Life』というタイトルのコラムのグランプリ受賞作品のタイトルです。
Life is made of 「if」and 「lie」
これを思い出しました。

アラン.チューリングこそこの法則に大きく翻弄された人物と言えるでしょう。

彼は元々コンピューターの世界では大変有名な方でしたが、2009年にこの件で世界をあっと驚かせます。
この新しいイギリスの伝説、この人物を外国人監督に撮らせるという懐の深さが、この映画の品格になっていると思います。

この映画は学生時代の彼の『もし』と『嘘』
エニグマ解読までの彼の『もし』と『嘘』
そして解読後の彼の『もし』と『嘘』
命の選択の『もし』と『嘘』
そして戦争そのものの『もし』と『嘘』
それに翻弄される彼の本当の『人生』の物語になっています。

彼の『もし』と『嘘』にはいつも『切なさ』と『本当』が伴います。
そして、この映画では直接語られなかった行間の部分『何故何十年もこの秘密が護られたのか。何故この秘密を話してしまう人がいなかったのか』

アラン.チューリングも彼の窮地で取引出来たはず。
「それをしなかったのは実にイギリス人らしい」と納得してしまえたのはベネディクト.カンバーバッチの存在があったからこそ。
彼の存在がイギリス人として、また天才数学者アランチューリングとしてのアイデンティティに説得力を生んでいました。

この話は社会、国家、情報、戦争、友情、裏切り、孤独、マイノリティ全てが彼の『もし』と『嘘』の『人生』を通して描かれます。彼の存在に説得力がなければ成り立たなかったでしょう。

もうひとつ、難しいことを難しいまま表現するのは凡人のすること、この映画は難解な用語を使わず解りやすく物語を進めている、そこも特筆すべきところでしょう。

詩情溢れるようなテンポと映像のこの作品が、低予算で切り詰めて創られた映画だなんて、本当にすごい。

ジョンルイスのCMを観ても、この映画を観てもイギリスの映像業界のセンスの良さは侮れないなと思いました。

是非お薦めしたい映画です。

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にゃらん