「切ないマシン。」イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
切ないマシン。
観終えた時、なぜこんなに切なさが込み上げてくるんだろうと
数学者の物語からは想像もつかない感動が押し寄せてくる作品。
G・ムーアのアカデミー脚色賞受賞は当然の素晴らしい脚本。
天才数学者の数奇な運命を要所要所で巧みに取り上げ、
彼の人となりを短い時間の中で明確に浮かび上がらせている。
A・チューリングは現在のコンピューターの父と謳われる人だが、
その最高傑作の功績を人々は50年以上も知らされていなかった。
ドイツ軍が誇る暗号機“エニグマ”の解読。これを成功させ
戦争終結を早めるも、彼の人生は豊かな晩年にまで至らなかった。
今作では彼の一生を少年期と現在を行き来する形で解説していくが、
マシン(のちのチューリングマシン)につけられた名称の真相といい、
パズル解読からの精鋭集めといい、暗号オタクやスパイが混合する
チーム内で解読法をゲームと名付けるアランの変人ぶりが面白い。
コミュニケーション障害を抱える彼の秘密は仲間内にも知れ渡るが、
そんな彼と仲間を融合させるジョーンの存在はかなり重要だった。
こういった天才にありがちの変人ぶりは、他者を度外視して突き進む
性質に見られるが、アランもまったくその部類で仲良しはマシンだけ。
そんな彼の性格をより人間に近づけたのが彼女の役割で、それにより
彼は苦しむことにはなるが、よりよい人間性を身につけることとなる。
どんな天才もマシンではないことが、青年期のアランが想いを寄せた
生徒への描写で語られると、ラストの涙目の嗚咽に胸が苦しくなるが、
それにしても同性愛への偏見には凄まじい歴史があったのを思い知る。
もし違う時代に生まれていたらとその功績の大きさゆえ思いは募るが、
数奇な運命も苦しみだけではなかったことがしっかりと描かれている。
(カンバーバッチがまたよく似合っている。豪華共演俳優も演技で応酬)