「哀しみに満ちた偉業」イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)
哀しみに満ちた偉業
まさしく天才と変人は紙一重、ナチスドイツの暗号エニグマを解読したアラン・チューリングの波乱に満ちた人生模様には、思わずグイっと引き込まれてしまいました。
これが実話ベースの話とは、何とも切ないですねぇ~。
もし彼がいなかったら第二次世界大戦の行方もまだまだ混とんとした情勢が続いていたのだろうし、我々が日々見慣れているコンピューターが日の目に出たのも遅れていたかもしれないと考えると、歴史上大いに称えられておかしくない人物なのに、その存在がずっと最近まで封印されたままだったと言うのは、ホント信じられない話ですね。
そして彼の人生の顛末には、胸が締め付けられる思いで一杯になってしまいましたよ。
まあ正直チューリング自身はいろんな意味で普通じゃない、リアルにこんな人がそばにいたら友達になれる自信はありません、でも間違いなく天才、孤高の天才だ、普通じゃないから普通じゃない偉業を達成できるのだなと、妙に納得させられてしまいました。
でも物語として、彼の変人ぶり、天才ぶりを見せつけられるだけではなかったところに、とても面白みを感じました。
哀しい過去、彼の理解者であるジョーンの存在、更には最初はいがみ合っていた仲間の存在、そして解読後の話と、最初から最後までずっと惹きつけられっぱなしでした、話にホント隙が無かった、脚本・演出が本当に素晴らしい作品でしたね。
それと何かとチューリングを疎ましく思う中佐の妨害ぶりも、映画のエンタメ性としてナイス妨害っぷりでしたし、マーク・ストロングのMI-6の存在も妙にリアルで良かったです、まさしく戦争は情報戦なんだなと言うことを、まざまざまと見せつけられました。
そんな中でも、暗号解読後も冷静に対処するチューリングは、やっぱり天才だなと、改めて思わされましたね、だけに、彼の顛末が何とも・・・。
時代が変わってこうやって日の目を見ることができたのは、まあ唯一の救いでしょうか、そして彼を知れて心から良かったなと、そう思わずにはいられませんでしたよ。
しかしチューリングを演じたべネディクト・カンバーバッチの演技は凄かった、コミュ障で天才な人を演じさせたら右に出る者はいないかも!
彼の理解者ジョーンを演じたキーラ・ナイトレイも相変わらず素敵でしたね、よくある献身的に支える妻みたいな構図じゃない新しい形にも、物凄く心惹かれました、彼女も天才だったからこそ、彼を理解できたのかな。
そしてクリストファーに込められた思い、あれには泣かされた、これは戦争映画であり、伝記映画であり、純愛映画でもあったのかな、まあとにかくとても見応えのある作品でした。