「おとぎ話に必要なもの。」美女と野獣(2014) ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
おとぎ話に必要なもの。
J・コクトー版、ディズニー・アニメ版、で有名な本作が
ご本家フランスで、より原作に近い形でリメイクされた。
まぁとにかく、目で、映像で、楽しめる作品。
全編ロココ調の優美で繊細な世界観は、ハリウッド産の
ファンタジーとは全く違うイメージに包まれて面白い。
主人公ベルには「アデル~」でパルムドールを獲った女優
L・セドゥ。彼女のクールな顔は男でも女でもオッケイ!?
とばかりに観ていても相変らずドキドキするのだが、
そんな彼女をモノにしたいならこのくらいじゃないと(爆)
と思うほど獣に近い(失礼)俳優V・カッセル。ノーメイクで
イケるんじゃないか!?というくらい今回もハマっている。
(さすがジェヴォーダンの獣!)
監督ならではの装飾とVFXがロココに現代要素を加え、
迫力あるシーンもけっこう満載。映画ファンなら、あれ?
これ「大魔神怒る」だよね~?と気付くあたりも受け合い。
今作では原作にもあまり明かされていない野獣の過去に
焦点を当てたらしい。どちらかというとベルの成長に軸を
絞った物語は、なんでこの王子はこんな姿に?と思わせる
要素が十分あるのに説明されない(アニメは別として)のが
もどかしい。あの姿にされるにはそれなりの理由があった、
という話の後半では胸が詰まるほど悲しい物語が展開する。
そりゃ~アンタ、ベルにディナーを強要(一応ね)はしても、
危害を加えないのは当たり前。あんな思いをしたんだもの。
まぁ野獣にしてもベルにしても愛情溢れるお人柄ながら、
どうも家族内では浮いちゃう存在というか…(環境による)
あ~あるあるこういうの。と思わずにいられないのがミソ。
こういう繊細な心情の汲みとり方が、俳優それぞれの表情
から台詞もなく出てくるのが本当に上手い。おとぎ話って
子供がこれを嗅ぎとれるよう訓練させている気がするのだ。
おとぎ話が残酷性を失っては何を云わんとしているのかが
全く伝わらなくなってしまうので最近の改刷には首を傾げる。
ラストへの繋げ方も想像通りで、のどか且つ微笑ましい。
(日本の子供にも本当の昔話を伝えるべき。心を鍛えないと)