「「ロックは世界を変えられる」を実感した瞬間」日々ロック えらさんの映画レビュー(感想・評価)
「ロックは世界を変えられる」を実感した瞬間
単純な感想としては、これだけ笑って泣ければもう満足だよということ。前野朋也君、落合モトキ君、板橋駿谷さん(とガンビーノ小林さん)あたりが個人的に最高。野村周平君や二階堂ふみちゃんの体当たり演技に拍手。曲も良い!特に主題歌が!サントラも買います!
『サイタマノラッパー』シリーズとやってることは割と近いんだけど、そこに笑いや感動、可愛さ、迫力のライブシーンなど(かなり人を選びそうながらも)エンターテイメント性を足しているあたり入江悠さん流石だなと思う。でも今時ありがちな綺麗な映画にはしたくなかったんだなというのが画面から伝わってくるんですよね。汁とか乱闘とかね。ラストシーンでは「あのダメな日々沼が仲間に支えられてこんなすげーことを…」と胸が大いに熱くなってしまいました。とにかく単純に見てて面白い。多くの人に見て欲しいです。入江監督の『ジョーカーゲーム』も楽しみっす。
ここからは『SR サイタマノラッパー』以来の入江悠監督作品のファンが劇場で2回見てきたので自分なりに考えたことなどを。何故かですます調じゃなくなってます。若干ネタバレも。
正直見る前はかなり不安だった。最大の理由は予告編にもあった「ロックは世界を変えられる」という主人公のセリフだった。正直「そんなわけねーじゃん」ぐらいの反感を覚えた。
しかし主人公の拓郎のロックを聞いたある人物の最高の笑顔で、「拓郎のロックンロールはこの人が見ている世界、つまりこの人の世界を変えている」と説明のセリフなど一切無いのに思った。と同時に咲の持つロック魂に拓郎自身の世界も変えられていたんだと気付いた。それまでは「まあ…面白いな」ぐらいの感じだったのだが、どうしようもなく納得し、これまでの入江悠監督作同様愛おしい作品になった。
そんなことを考えながら2回目を見ると、ラストのライブシーンの前の主人公のセリフで落涙してしまった。まさかこんなヤバい奴に泣かされるとは…と最初は思った。けど、それまでがヤバい奴だったからこそ、この感動は間違いなくあった。まともに人と話すことができない、真っ直ぐ立つことすらできない「ロックがないとヤバい人」というキャラクターがカタルシスのバネを限界まで押し縮め、ライブシーンでそのバネが伸びる瞬間の気持ち良さや感動を確固たるものにしているのだと思う。繰り返しになるけど端的に「あのダメな日々沼が仲間に支えられてこんなすげーことを…」と胸が大いに熱くなってしまったのだ。
主演の野村周平君は「ロックがないとヤバい人」を全身で、体当たりで、普段の様が想像できない程に演じきっている。野村君は普通に立ってればかっこいいだけに、この演技には本当に拍手したい。勿論、この日々沼のやり過ぎにも見えるキャラクターに反感や不快感を覚えるというのはすごくわかるのだけど、そこをクリアできれば、いや、ラストシーンまでクリアできなくともそれを覆す程のパワーがあのラストにはある。
惜しむらくは(二階堂ふみも難しかったと言っていたけど)宇田川咲がライブハウスで歌うあの曲が弱いことや、乱闘シーンが(やりたかったんだろうけど笑)長すぎなこと、エンドロールまでずるずる続く3人のセリフが余計ということか。主題歌が良いことやSRシリーズのエンディングの余韻が大好きなだけにそこは残念。