「音の記憶」闇のあとの光 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
音の記憶
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サウンドデザインが特徴的だった。
音楽は殆ど使われていない。
日常の音(雨の音、虫の音、車の音、話し声など)のみ。
所々、不自然なくらい音量のバランスを変えていて、普段は聞き流している日常音が強調され、騒がしく、存在感を持って迫ってくる。
臨場感というのともちょっと違う。実際の音のバランスとは明らかに異なるからだ(音の遠近がチグハグだ)。だが、何故か生々しい。
日常の音。昔から聞き慣れている音。どこか懐かしさのある音。
映画後半に、主人公が「音の記憶」を語るシーンがあって、なるほど、ストンと腑に落ちた。
映画全篇に流れる音は、主人公の記憶の中の音でもあったんだと、気付く。
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映像も同様だ。
写っている出来事は、たわいない日常の断片だ。そして何かが強調され暈され歪んでいる。
誰かの記憶の断片。整理はされていないから、時系列も飛び飛びだ。そして時々、願望や贖罪といった感情の映像も混じってくる。
まるで誰かの頭の中をそのまま覗いているような感覚。
他人の記憶とシンクロしているような体験。
そういうところが,スリリングで面白いなあと思った。
(哲学的というよりもセンシュアスだなあと思った。)
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記憶には、光景・音・時間・感情・歴史・生死が、秩序の無いまま一緒くたに混じりあう。
それらが一気に流れ出てきたような映画だった。
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