「なんで日本語字幕が「最低だ」なのか」勝手にしやがれ 映画を見たり見なかったりする人さんの映画レビュー(感想・評価)
なんで日本語字幕が「最低だ」なのか
すごく昔の作品なのに、この点に触れられているコメントはほとんど見ないので、今更だけど書きます。
ベルモンドの最期のセリフは「デギュラス」degueulasseなんだけど、これは直訳なら「吐き気を催すほどのもの」という意味で、状況がそれほどひどいということ。
忌避すべき、くらいの強いニュアンスで使うけど、容姿形容で使われることが多い。
本編なかほどでベルモンドはセバーグにこの言葉を使っている。そこでの訳は「醜い」になっている。
ベ「本心とは逆のことを言うもんだ」ベ「君は醜い(デギュラス)」セ「デギュラスって?(フランス語がつたないアメリカ人なので意味がわからない」
ここでベルモンドは変顔してみせる。
このやりとりが、まんまベルモンド最期のシーンに繋がる。ベルモンドはまず変顔し、そしてデギュラスと言って息絶える。
セバーグが何て言ったのか刑事に聞いて、デギュラスと言ったと彼は答える。
それはシチュエーションからしたら「(裏切って)お前は最低だ」と理解すべきなのかもしれないが、彼女は変顔とセリフから、あの時のやりとりだとわかる。
そして彼を理解して、彼の癖だった唇を拭うしぐさをする。
そういうシーン。でもこれが、邦訳の「最低だ」だけだとさっぱりわからない。
台詞上「Tu es ~(君は)」と「C'est ~(こんなの)」の違いはあれど、デギュラスは重要なキーワード。そこはしっかりわかるように翻訳してほしい。
あと、日本語字幕では「車」としか書いてないけど、セリフでは2CV(シトロエン)や403(プジョー)等と車種を言ってたり、彼女のことを聞かれて「アメリカ人」と言ってることになってるけど実際には「ニューヨーカー」と言ってたり。
ゴダールは台詞にもかなり気を配っているので、もう一度しっかり訳して欲しいなあ。