劇場公開日 2022年4月29日

  • 予告編を見る

「ジャン=リュック・ゴダール監督を偲んで」勝手にしやがれ 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ジャン=リュック・ゴダール監督を偲んで

2022年9月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

難しい

寝られる

ジャン=リュック・ゴダール
9月13日死去
享年91
持病に苦しみスイスで薬物による安楽死を選択

U-NEXTで鑑賞

ヌーベルバーグ
ニュースで久々に耳にした
脚本より映像か
ゴダール監督作品初鑑賞
昔のフランス映画は野暮天にはハードルが高い
1960年だから日本の年号では昭和35年
既に日本でもカラーが主流だからこの作品がモノクロなのはゴダール監督の拘りだろう

あらすじ
自動車泥棒の常習犯ミシェル・ポワカールはマルセイユ郊外で追跡中の警察官を射殺してしまう
パリに逃亡したミシェルはアメリカ人留学生パトリシア・フランキーニと再会しやがて男女の関係になる
ミシェルとの逃亡を断念したパトリシアは警察に密告してしまう

映画の原題は『A bout de souffle』
「息ができない」か

ミシェル
「もしあんたが海が嫌いで山も嫌いならそして街も嫌いなら勝手にしやがれ!」

邦題のタイトルはこの台詞から取られたんだろう
むかし公開された洋画の日本だけのタイトルはかっこいいものが多い印象

『勝手にしやがれ』といえばまず思いつくのが阿久悠が作詞した沢田研二の代表曲だがこの映画のタイトルから拝借したらしい
この映画がなければジュリーが帽子を飛ばすことは無かったし『プレイバックPart2』も『勝手にシンドバット』も生まれてなかったかもしれない
その点だけでもこの作品は日本に絶大な影響を与えた黒船といえる

語尾にやがれといえば「待ちやがれ」「一昨日きやがれ」だが時代劇っぽくもありなんだか古めかしい
「一昨日きやがれ」に至っては全く無理な話でドクにデロリアンを改造してもらわないといけない
最近では大島優子の写真集『脱ぎやがれ!』だが目立つのは半ケツ程度で中西里菜に比べたら然程脱いでいるわけではない
半ケツは腰が曲がり切った片田舎の婆さんが誰に頼まれたわけでないのに野外露出するのであまり好きじゃない

話を映画の内容に戻す

パトリシアのこの台詞も良い

「あなたを愛したくないの。だから警察に電話したの。これが愛なのかを知りたくて一緒にいたわ。自分の気持ちを確かめるために。私はひどい仕打ちをした。つまりこれは愛じゃないわ」

白昼の街中だというのに丸腰のミシェルの背中にいきなり発砲するパリ警察
無茶苦茶だ

ミシェル
「君は本当に最低だ」
パトリシア
「最低って何?」

不自然な映像が多い気がする
トイレで警察を巻いたパトリシアがミシェルに会うシーンはいきなりすぎた
いらないシーンをカットして強引にくっつけたせいだろう

初のヌーベルバーグだがそれ以前のフランス映画を詳しく知らないのでその違いがよくわからない
自分は幸いなことに鑑賞中に眠ったりはしなかったが王道のハリウッド映画こそ本当の映画だと断言するようなタイプは爆睡する可能性大
都会的でインテリなセレブならこのくらいの映画の良さは十分理解できるだろうし一流の嗜みといえよう
僕は一回観ただけではこれだけ高く評価されている理由がよくわからなかった
ただなんとなくだがカッコ良さは伝わった

ショートカットのジーン・セバーグがとてもキュート
『悲しみよこんにちわ』のセシルカットだ

野川新栄
野川新栄さんのコメント
2022年9月18日

映画を見たり見なかったりする人のレビューは豆知識として興味深い
しかし翻訳=直訳ではない
翻訳とは直訳より意訳中心だということを理解してもらいたい
直訳ばかりだと多くの日本人にはちんぷんかんぷんになることが多いはずだ

そもそもこの作品もタイトルが原題と違う
翻訳についてゴダール監督側からクレームがきたときかないのでこれでも特に問題はないのだろう

その豆知識もWikipediaの
「セバーグ」と表記されることが多く、日本ではそれが定着しているが実際の発音は「シバーグ」または「スィバーグ」である。
その程度のドヤ顔な豆知識にすぎない

野川新栄