「ベタベタ映画」振り子 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ベタベタ映画
ある夫婦の共に歩んだ歳月を描き、感動と反響を呼んだお笑い芸人・鉄拳の“パラパラ漫画”を映画化。
いきなり言ってしまうが、
パラパラ漫画だから良かったのである。
ショート作品の中に、夫婦愛や喜怒哀楽が濃縮されていたからこそ感動的だったのである。
それを無理矢理2時間の尺にしたって…。
濃いカルピスを水の分量間違って薄め過ぎたって美味しくない。
と言うか、あのパラパラ漫画を見て、こんなステレオタイプの作品にしか作れない作り手側にも問題あり。
話の展開は一応元のパラパラ漫画に沿っている。
が、演出も脚本も演技も何もかも、陳腐。
昭和のドラマと言うより、ベタ過ぎてまるでコントを見ているよう。
ナレーションや延々流れ続ける音楽があざとい。
中村獅童&小西真奈美、石田卓也&清水富美加はそれなりに好演するが、不器用で自分勝手な愚夫とどんな事があっても支え尽くす良妻は理想像というより、現実味ナシ。ファンタジーの住人。
如何にもなTHE昭和の下町親父の武田鉄矢の演技は見てるこっちが恥ずかしくなってくる。
時の経過も下手。ポンポンポンポン、ダイジェストのように時が流れ、ほんの一年後なのに急に石田&清水から中村&小西に変わったりして、登場人物変わったのか?…とさえ思った。
20年の時が経ってるというのに、演者の見映えもほとんど変わらない。
二人のこっ恥ずかしい出会いやバイク店オープン、娘誕生などの幸せな日々→ここでほっこりしろ!
二人のやり取り、掛け合い→ここで笑え!
借金苦、貧乏生活、浮気、妻が病に倒れ、妻への愛が再燃、思わぬラスト、娘の結婚式→これらでボロボロ泣け!
感情を強要されてるかのよう。
時は戻らない。戻す事も、抗う事も出来ない。
映画化の企画が上がった前に戻って、STOPを掛ける事も出来ない。
パラパラ漫画がベタベタ映画に。