「ジャングルの王の憂鬱な帰還」ターザン:REBORN 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャングルの王の憂鬱な帰還
エンタメ映画のレビューはあんまり深刻に考えずに
書ける場合が多いのでいつもは筆が進むのだけど、
時々どう書いたもんかと困るものがある。例えば
本作のように、エンタメとしてはある程度の条件を
満たしている筈なのに、心踊らない映画の場合。
つまり「なんか分かんないけど面白くないなコレ」って時。
……この時点で相当にディスってる訳だが……
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妻ジェーンとの英国での生活に慣れ、すっかり
英国紳士となったターザンが、生まれ故郷でのダイヤ
盗掘や奴隷売買の陰謀を暴く為に再びジャングルへ。
そこで悪党に拐われてしまったジェーンを救出せんと
追跡行を繰り広げる、という内容。
僕は元の『ターザン』についてはあらすじくらいしか
知らないのだが、殺伐とした雰囲気の冒頭や、彼が
スパイのような任務を負う流れまでは面白いと感じた。
ダイナミックな見せ場やスタイリッシュなアクション、
ロマンチックなシーン等々も綺麗に撮れてはいる。
キャストも悪くない。
主演のA・スカルスガルドは紳士的な雰囲気と
ワイルドな筋肉美でヒーロー性は十二分。
M・ロビーも、美貌も鼻っ柱の強さも
人一倍なヒロインを魅力的に演じている。
仇敵を演じるC・ヴァルツも毎度ながら◎。
小柄で小綺麗な風貌は、野生の中では誰よりも軟弱
そうなのに、見た目にそぐわぬ攻撃性が恐ろしい。
あとはこちらも毎度楽しいS・L・ジャクソン。
今回はまさかのターザンの相棒兼ボケ担当(笑)。
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とまあ、役者良し、設定良し、映像良し、と来たら
それはもう面白くなりそうなものなのだけど、
残念ながら僕はまるで楽しめなかった。それどころか
中盤辺りからは何度も睡魔に襲われてしまっていた。
なんつうかな、
時系列がぽんぽん前後するので疾走感が薄いとか、
家族のように接してくれた原住民たちとの絆が浅く
見えてあの展開にもいまいち闘志が湧かないとか、
ちょくちょく挟み込まれる動物たちとのふれあいも
取って付けたような感じで白々しいとか、
ちょいちょい興を削がれる演出が積み重なっていく感じ。
『ジュラシックパーク』のブラキオサウルスみたいな
ノリで象さんが出てきても今時そこまでセンス・
オブ・ワンダーは感じないし……序盤のライオンも
伏線かと思いきやただの主人公アピールだったし……
てか、一番種類の近いゴリラともっと仲良くなさいよターザン。
ジャングルの王という割にはボスゴリラとの闘いはあんなだし。
そもそもパワーで敵うはず無いんだから、そこは
知恵や敏捷さを活かすべきじゃないのかしら。
今までどうやって群れを率いてきたの?と首を傾げる。
映像は綺麗でも、ある程度リアル路線を狙ったせいか
アクションシーンにイマイチ爆発力が無い点も痛い。
だが、キャラクターに感情移入がしにくい点はもっと痛い。
自分を見失いかけていた男が闘いを通して「王」の
威厳を取り戻していくとか、心の離れつつあった夫婦が
絆を取り戻していくとか、ドラマ的に良くなりそうな
要素はあるのに、感情的なリアリティやキャラクター
の“芯”みたいなものが何故だか感じられなかった。
それが何故かをうまく説明できないのが歯痒いのだけど、
むやみやたらに鬱々した雰囲気とか勿体ぶった
感じを受けて、面倒臭く感じてしまった次第。
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以上。
古典的な物語にリアリティある映像やドラマを
持ち込もうとしたのだろうけど、足して良くなる
はずの要素がお互いの足を引っ張りあっている印象。
他のレビュアーさんと比べても随分厳しめだが、
個人的にはかなりイマイチの2.0判定で。
<2016.07.30鑑賞>
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余談:
本日のサミュエル・L・ジャクソン。
・登場時、訳知り顔でターザンの側に座ってたのに
その後で自己紹介するサミュ兄貴に「初対面
だったんかいッ!」と心の中でツッコむ。
・ツタにしがみついて「アアアア~!」と甲高く
叫ぶサミュ兄貴に「お前が叫ぶんかいッ!」
と心の中で全力でツッコむ(あとツタ長い)。