「人物中心に上手く描けていた。」ソロモンの偽証 後篇・裁判 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
人物中心に上手く描けていた。
総合:75点 ( ストーリー:70点|キャスト:80点|演出:75点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
前半は状況の説明で前振りだが、後半は一転してほぼ本題の裁判の話ぱかりになる。前半の嘘だらけと思われる疑わしい展開から、その裁判で事件の真実に一気に迫る。
裁判が進むにつれてそういうことかとわかった部分では良かったし、登場人物たちの情況と何を感じて何をしようとしたのかというのもわかったのも良かった。そのようなそれぞれの登場人物の描き分けもしっかり出来ていたし、彼らの性格も置かれている状況も心理状態もわからせる成島出監督の力量を感じた。この監督は『八日目の蝉』でも力を見せていたし、このような社会的な内容で人物の内面を描く作品を撮影させたら上手だと思った。他の作品も積極的に観てみたい。
そしてやはり業界の知名度を無視して配役された、設定相応の年頃の少年少女が傷ついていく様を演じているのが良かった。この手の作品にありがちな、中学生に見えない年上の売り出し中の俳優が実力不足のまま演じているのは観るに堪えないが、本作は自然に感じられた。人物中心の内容なので、もしそれが自然に観えないのならばそれだけで作品は失敗したようなものだ。だからこの配役は評価したい。特に無名の新人、藤野涼子は良くやりました。
前編の感想でも書いたが、納得しかねる部分としては中学生による裁判が開かれるということ。作品内では困難に直面しつつも裁判の開催もその内容も申し分なく上手くいってしまう。でもそれぞれの立場の利害関係者もたくさんいるし、中学生に真実を暴き立てる能力と運営する能力があるのか、本当に上手くいくのかということを、最初からどうしても疑いながら納得しないまま観ていた。
現実だと反対多数と、証拠集めが出来ず、被告・承認に出席してもらえないことで開催できず、譬え開催したとしても真実にたどり着けたかどうかわからないのではないか。さらに悪いのは、裁判が上手くいかず真実を暴けないままに間違った判断をしてしまうことではないか。結果としては真実を知っている人物がいたのもあり真実をしっかりと暴き生徒たちの問題と思想もわかる裁判になったが、その現実性への疑問は最後まで続いた。
また嘘をついた人、間違いを犯した人、そのような人がどうなったのか、裁判後の警察と学校の対応も不明。真実はわかった、でもその結果どうなったかが無い。真実がわかったから良いというものではないでしょう。それならば真実を知っていた神原が最初から真実を話せばよかっただけ。だから凄く高い点数はつけません。