「緊張感あり」パッセンジャー 肉しか勝たんさんの映画レビュー(感想・評価)
緊張感あり
深夜放送を途中から鑑賞。要約は宇宙移民船で長期航海中、エネルギー源の核融合システムのトラブルで冬眠ポッドも故障、目覚めた乗客が死と隣合わせで宇宙船を修復しながら移住星を目指す話。これだけならよくあるスペースファンタジーで済むのかもしれないけれど、移住星到着まで90年掛かるため、最初に目覚めた主人公ジムが孤独に耐えかねて一人の女性・オーロラの冬眠ポッドを解除するという殺人に近い行為を犯してしまう。当初、オーロラはジムと恋に落ちるものの、ジムの身勝手から冬眠ポッドを解除されたと知ると、当然ながらジムを強く怨むようになる。閉塞された、しかも沈没寸前の宇宙船の中で、自分を移住星に到着する前に死を迎えさせる男と、自分を殺したいほど憎む女と二人きり。でも結局二人しかいないという孤独と絶望感からか、加えて怒涛のように襲いかかる宇宙船のアクシデントを二人で乗り越えているうちに、最期は二人の関係も修復。
一度冬眠から目覚めたら再冬眠不可らしいからそのへんは仕方ないとしても、普通、無人の宇宙船が故障したら何があろうと自動で修復出来るシステムにするか、バーテンダーじゃなくて万能ロボット配置しとくか、誰か叩き起こしてでも修復出来るよう保険つけとかないか?とは思いました。あと、乗組員でもないただの乗客のジムとオーロラが、結構迷いなく宇宙船操作するんですよね。そのへんツッコミどころあるので星0.5減っちゃいました。
あと誰かも書いてたけど、最初に目覚めたのが冴えない中年男で、ピチピチのうら若い女性を目覚めさせたとしたら…ゾッとしますからね。少なくともイケメン覚醒で良かったです。
でもかなり緊張感持って観れます。再放送観れるかと問われたら「あり」でしょう。宇宙船の精緻なセットも臨場感を演出。特筆は、主に演者はジムとオーロラ二人だけなのに、それを感じさせないほど観ている側の人感センサーが誤作動します。理由を考えるに(ジムもいいのですが)オーロラ役の女優の演技が秀逸なんだと。宇宙船のアクシデントへのパニック、ジムが自分を目覚めさせた張本人と知った時の混乱から怨みへの変化、ジムが死してしまう恐怖、生還した時の喜び。映画を観ていることを忘れさせて観客を映画に没頭させる演技とはこのことでしょう。映画も及第点だったけど、これだけでも観てよかったと思わせてくれる。また彼女の演技、観たいと思いました。