「寒椿」柘榴坂の仇討 玉川上水の亀さんの映画レビュー(感想・評価)
寒椿
浅田次郎さんの短編集「五郎治殿御始末」に収録されている一編の映画化作品。
原作自体は短編なので、どう上映約2時間の映画にしたのか興味深く鑑賞。
本作品の若松節朗監督は、原作のエッセンスはそのままに、更にその世界観を掘り下げて映像化した。
それは浅田次郎さんが幕末歴史小説で描き続けてきた、時代が変わっても武士の矜持を持ち続け、寒椿のようにひたむきに生きる男達の姿。
その男達を本作品では、中井貴一さんと阿部寛さんが体現する。
お二人が演じる男達にとって人生の大きな転換点は「桜田門外ノ変」。
片や、主君・井伊直弼を守る御駕籠回り近習、此方、国士としてその井伊大老を討たんとする水戸浪士。
「桜田門外ノ変」後、この二人は被害者側と加害者側という対極の立場となる。
近習として主君を守れなかった彦根藩士・志村金吾は切腹を許されず、刺客の仇討を命じられる。
そして18名の刺客の生き残りである佐橋十兵衛は、身をやつして市井の中で独り暮らしているのだが…
江戸から東京、幕府から新政府、そして年号も明治へ、時代や世相が変わっても「侍」を引き摺って生きる男達。
特に本作品の二人は、ある瞬間から時計の針が止まったままだ。
終盤、この二人が対峙して初めて、時計の針は再び動き出す。
果たして金吾は仇討の本懐を遂げることが出来るのか?
若松監督は、原作の持つもう一つの要素を掘り下げる。
それは夫婦のドラマ。
志村金吾とその妻セツとの夫婦ドラマは原作よりも味わい深く、心に深く余韻が残ります。
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