「時代劇はいいなあ!」柘榴坂の仇討 レッサーパンダさんの映画レビュー(感想・評価)
時代劇はいいなあ!
時代劇はいいなあ!と思う。
現代ほど自由はないかもしれないが、皆が矜持というのか誇りと自信を持って生きている気がする。芯が強くてぶれることが無い。
逆にそれだからこそ時代が変わってしまえば取り残される。これはそんな侍の話。
江戸が終わり明治になっても髷を切らず帯刀したままひたすら仇を追い求める。ついには仇討ち禁止令が出てしまう。その目指す仇がやっと見つかった時彼はどうするのか?がこの作品のクライマックス。
余計なセリフが無いのがいい。今の映画は余計な説明セリフが多すぎる。心情は言葉でなく態度や表情で表現する。それが演技だと思う。
作品のテーマも今の時代に合っているのではないか?とにかく何かと言えば「昭和のおじさん」とバカにされている中高年の男性には心に沁みるものがある。
どんな英雄も時代の価値観が変われば悪人扱いとなり、反逆者だったものが英雄になったりもする。さらに時代が変われば人の評価はまた変わる。虚しいと思う。
減点をあげるとすれば生活苦がさほど描かれないところかな。主人公はひたすら江戸時代の姿のままで仇を追い求めるばかりで生活のやりくりはすべて妻まかせ。それどころか借金苦で困っている人の仲裁に入ったりまでしている。廃藩置県で禄を失った他の侍たちは髷を落として市井の人に混じって仕事をしている。姿はかわっても侍は何処にでもいる。それを描きたいのなら中井貴一さん演じる主人公もそうすべきではなかったか?そのうえで仇討ちを心に秘めて生き続ける。そのほうが説得力があったように思う。
藤竜也さんがいい味を出している。時代遅れなのかもしれないが信念があって愛嬌もある。そんな明治の侍を見事に演じられていると思う。
あと、雪のシーンは良かったですね。美術スタッフが頑張ったんだと思います。