「ハイソでナイスなナイト」ブレイン・ゲーム つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ハイソでナイスなナイト
アンソニー・ホプキンスにハイソな趣味であるオペラとか聴かせちゃダメよ。途端にレクター博士にしか見えなくなっちゃうんだもの。
それでも、未来や過去のビジョンを見る超能力捜査をワクワクしながら観ていくうちに、ホプキンスは凄く鋭い勘を持つジョンと同化していく。気が付けばレクター博士の影など微塵も存在しなかった。さすが名優ホプキンス、ナイトの称号は伊達じゃない。オペラを聴くのも仕方ない。
サスペンス系の作品だと思うけど、フラッシュバックのように見えるジョンの予知がやけにハラハラさせてアクション映画を観ているような高揚感があるよね。無性にポップコーンが食べたくなるような興奮。
未来のビジョンが少しずつ紐解かれて、現在が追い付いていくところとか、人物が可能性の数だけ分岐していくところとか、未来視で最悪の未来を回避するところとか、物語的にも映像的にも面白いところが満載で、敵役のコリン・ファレルが本格的に登場したあたりからは本当に面白くて、未来は見えなくてもあらゆるストーリーの可能性を考えてしまったよね。その中でもなかなかナイスで洒落たエンディングを迎えたのも良かったと思うよ。
内容とキャスティングのわりには少々小粒で地味な感じだったから満点にはしないけれど、こいつはかなり掘り出し物なんじゃないかな。最近、マイナー作品の当たりを引き続けているのでなんか嬉しい。
敵役のチャールズは、娘を殺していたジョンがなっていたかもしれない自分だ。
ラストの列車での対決シーンで、娘の姿を重ねたキャサリンを守り、過去の自分を投影したチャールズを倒したことで、しこりとして残っていたものを精算したんだね。だから奥さんと仲なおりする事ができた。
と同時に、ジョンの額にはチャールズの後継者を示唆するような同じ傷痕が残り、ソワソワする不穏さがあるのもニクいし面白いよね。秀作です。