「主役2人の演技を楽しむ多層的なサスペンス」ブレイン・ゲーム しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
主役2人の演技を楽しむ多層的なサスペンス
アンソニー・ホプキンスとコリン・ファレルの達者な演技を楽しめるサイコ・サスペンス。
と書くと一見、アンソニー・ホプキンスが悪役のように思えるけど、実際はコリン・ファレルが犯人役をねっとりと演じている。
コリン・ファレルが出演することは映画のポスターなんかでも判っていて、しかし、なかなか登場しない。
こうなると、ああ、彼が犯人役なのね、と容易に想像できてしまう。仕方ないけど、もったいないね。
原題はsolace。慰め、癒しなどのほか、苦痛の緩和という意味がある。
本作のタイトルとしては、こちらのほうがまさにピッタリで、冒頭、タイトルロールのところでも、わざわざ字幕が出る。
劇中、「究極の愛には犠牲を伴う」というセリフが繰り返され、本作は、犯人を追うサスペンスとともに安楽死がテーマとなる。
という点では「ミリオンダラー・ベイビー」「海を飛ぶ夢」なんかを思い出すのだが、本作のミソは、そこに未来の予知という要素を加えたところ。
この映画に登場する超能力者たちは、親しい人や家族の未来まで見えてしまう。もちろん、死や病の苦しみといったことまで。
神ではない人間が、命に対して、どこまで行えるのか。
事件は解決するが、上記のような現代的な課題を余韻に残す。
本作はバディムービーとしても妙味があり、初めは反目していたが、やがて信頼関係を結ぶアビー・コーニッシュ演じる若き女性捜査官とアンソニー・ホプキンスのやり取りも楽しい。
ただし、サイコ・サスペンス、安楽死、超能力者、バディもの、家族など多層的なテーマを作品内で描き切っているかというと、不十分に感じられる。これらのテーマを描くのならば、アンソニー・ホプキンスとコリン・ファレルの対話以外になく、そう思えば、犯人役をもう少しじっくりと描いてくれたら、と思うところがある。
惜しい。