劇場公開日 2014年10月25日

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小野寺の弟・小野寺の姉 : インタビュー

2014年10月22日更新
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向井理×片桐はいり×山本美月×及川光博の個性が交じり合って生まれた“不器用”な恋愛と家族愛

向井理と片桐はいりが姉弟役を演じると聞いて驚いた人も、「小野寺の弟・小野寺の姉」を見ればその絶妙なコンビぶりにうならざるを得ない。早くに両親を亡くし、大人になっても変わらず一緒に暮らし続ける“不器用”姉弟、小野寺進と小野寺より子。そんな仲良し姉弟が恋に落ちる相手が、山本美月演じる絵本作家の岡野薫と、及川光博演じるコンタクトレンズ販売員の浅野暁。恋愛下手な面々を演じた4人が、劇中で繰り広げられるヤキモキするような恋愛模様と、それぞれの家族のあり方を語った。(取材・文・写真/山崎佐保子)

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「TIGER & BUNNY」「映画 怪物くん」「ガチ☆ボーイ」などの脚本家としても知られる西田征史監督が、2013年に上演された自作の同名舞台を映画化。世話好きなのに自分の恋になると消極的な40歳の姉・より子。姉の前だと自然体なのに人前だとちょっと無愛想になってしまう33歳の弟・進。性格は違えど、2人は程よい距離感を保ちながら仲良く暮らしていた。そんな平穏な小野寺家に、ある日1通の手紙が誤って配達されたことをきっかけに、姉弟の恋が動き出す。

向井は、過去の失恋の痛手からなかなか抜け出せない進を演じ、「西田さんが僕をあて書きしてくれたと聞いていたので、あまり自分と同じとか違うとかは深く考えなかったんです。どこにでもいるようなちょっと奥手な青年。姉がいない時でも、どこかに姉がちらついているような人。飛び抜けて変なわけじゃないけれど、ちょっと変わっている。それをメガネや寝ぐせの髪とかでうまく表現しながら、ごく自然体でやっていましたね」。

片桐も、向井を本当の弟のように思いながらより子を演じた。「いつも向井君と話しているような感じで、考えずに自然と演じていましたね。浅野さんとの芝居は緊張した関係性だし、薫さんとは『そうなのよ~』みたいなゆるいキャラ。相手によって全然違うキャラだったので、役作りとしてあっているのかはわかりませんけど……」と苦笑い。そんな時、浅野役の及川は「向かい合う人間によって見せる顔が違うって、とても自然で普通のことだと思います」と優しくフォローする。

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及川はこれまでの個性的なイメージとはひと味違う、いわゆる“普通の男”を演じている。「“普通”を演じるのってどれだけ大変なんだろうとワクワクしたけれど、演じる過程でその難しさを実感。“ありのままの私”でいることは、普通の男を演じることではないんですよね。ふだんから周囲の人をよく観察するようにしていますが、その収集したデータの寄せ集めが今回のキャラクターに生かされていると思います」と語る。

ふわっとしたガーリーな絵本作家・岡野を演じた山本もまた、本作で新たな一面を見せる。「モデルをやっているせいか、いつも体のラインが出るような衣装が多いので、今回みたいに肌の露出が少ないゆるふわな“森ガール”みたいな衣装は、とても新鮮で楽しかったです。薫は裏が全くない“いい子”なんですが、人は誰でも裏があると思うのでちょっと信じられないですよね……(笑)」と意味深にほほ笑んだ。

舞台版から、西田監督とは厚い信頼関係を築いてきた向井。「映画監督初作品って感じさせたのはクランクインの最初だけでしたね。とにかく決断が早くて迷うことがない。西田さんの中には明確なラインがあるので、常に堂々と演出してらっしゃった」という。及川も、「原作・脚本・監督と、まさに西田ワールド。役者への指示もとても細やかだった。きっと監督には明確なビジョンが見えていたんだと思う」と全幅の信頼を寄せる。

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家族という普遍的な題材ゆえ、演者自身の家族への思いも少なからずスクリーンに反映されているように見える。向井には兄がいるそうだが、「中学くらいの時からずっと海外にいるので疎遠なんです。たまに実家で会うくらいなので、ふだんの日常の中で兄を思い出す瞬間はあまりなかった。だけど、そこにはやはり切っても切れない血縁があるんだなと思う。僕は両親が健在なので、この兄弟を見て両親がいることはとてもありがたいことだなと改めて思いました」。

本作同様、片桐には弟がいる。「姉って『お姉さんなんだからしっかりしなきゃだめよ』って言われて育つけど、簡単に妹や弟に抜かれたりする。私も姉としての責任感はあったけれど、弟の方が出来がよくて本当に嫌だった」と本音を明かしつつ、「両親が亡くなって、弟とふたり取り残された感じは自分の状況とも似ている。私は母親のお棺を送り出す時に、『弟を生んでくださってありがとうございました』って思ったんですよ。それくらい姉弟ってありがたい。順番はわからないけれど、両親がいなくなっても残るものだから」と弟の存在に感謝していた。

山本は、妹とふたり姉妹。「私の場合も妹の方がしっかりしているかも。だけど進学先の中学、高校も真似したり、漫画も真似したり、妹はいつも私の真似ばかりしています(笑)。子どもの頃、そんな妹の粘土の人形のおもちゃを壊しちゃったことがあって、それをずっと隠していたことは、姉としてもかなりの罪悪感でした」。すると、妹と大の仲良しだという及川も「幼少期にあった事件のトラウマ、懺悔(ざんげ)の気持ちってよくわかる。今考えるとどうでもいいようなことも、心の片隅にずっと残っていて。それで正月に酔った勢いで半泣きで告白すると、向こうは忘れていたりする(笑)」と同調していた。

ささやかな家族の“あるある”話に花を咲かせた4人。及川が「演じていた僕たちもそうだけど、この映画を見た方はきっとご自身の家族を思い浮かべるんじゃないかな」と語るように、本作観賞後はそれぞれの家族を思い浮かべる“余白”の時間もじっくりと味わいたい。

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