「りえ強し。」紙の月 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
りえ強し。
NHKドラマの方は、原田知世がヒロインだった。
幸薄い主婦というイメージでは原田の方が似合っていたが、
今回のヒロイン宮沢りえは、圧倒的な存在感を放つ。
冒頭からヒロインに迷いがない。言い換えれば、なんでこの
主婦がこんな事件を起こしちゃってるの?という感じである。
地味で真面目で平凡だが、美人で親切。
ドラマの方ほど旦那も嫌な奴ではないし、職場環境も原作に
ないキャラクターが満載で、いちいち面白い。
うま~く配色しましたね、吉田監督。という感じがした。
やむにやまれず、というよりは今回のヒロインかなり能動的!
自主的に不倫し、自主的に横領し、自主的に逃亡する。
往生際のよさでピカイチ性根の座った宮沢りえは頼もしい。
そんなことやればすぐにバレちゃうよ?と思うデートなども
お茶の子さいさい。なにが悪い?私はやるわよ!ってなもん。
その潔さがあまりに秀逸なので、相手役の池松君もタジタジ。
誰がノーと言えようか!なくらい、迫るりえに圧倒される。
そんな彼女ありきの物語に今回は二人の女性が絡む。
この絡ませ方が秀逸で、お局・小林聡美と小悪魔・大島優子の
存在が犯人・りえを翻弄する。ドラマではもっと冒頭で暴露
されていた過去の経緯が、今作では一番ラストに披露される。
その一件で、初めてヒロインの行動が理解できるのだが、
ふと不思議に思うのが、彼女はなんでこの男を選んだのか?
ということである。夫にしても、不倫相手にしても…。
縛られたいのか解き放たれたいのか、この矛盾がヒロインの
最大の魅力になっているのかもしれないが、私には全くの謎。
他人の為に大金を施すことがどうしていけないのか。
一般から逸脱した感性になにを言っても通じないだろうが、
そうすることで自らを確認するヒロインはあまりに哀れだ。
若い頃とある金融機関で働いたことがあるのだが、
他人のお金を預かる立場で、エ?と思う金銭感覚の人が
結構多かった。地味で真面目な人だから…は通用しない。
いちいち思い出しては、腑に落ちていた自分である^^;
(小林聡美がきのこ頭で熱演!ああいう人もいました、懐かしい)