「多くの人がわからないんじゃないかな」紙の月 アメリカナイズさんの映画レビュー(感想・評価)
多くの人がわからないんじゃないかな
幸が薄く、どこかズレた感覚を思わせる頼りない宮沢りえの演技は勿論、その対極として自らの秩序に徹する小林聡美の力強い役柄は必見です。
パーマネント野ばら、腑抜けども、でも感じましたが吉田監督は女を描くのがやっぱり上手いですね。
あと池松君はなんかいっつも大学辞めてんなぁ、って印象。笑
こういう他力本願のヒモとかスネかじりとかやらせたら彼の右に出る者はそういないですね。
さて、配役、演技は当然いいとして肝心のストーリーはというと。正直自分も1回見ただけでは何が言いたいのか汲み取れませんでした。
というより、どういった形でも取れると言った方が正しいのかな。
最後のシーンで彼女の「与える」ことによる幸せが報われたともとれるし、それすら偽物で型どられたものだと彼女自身が真に自覚する瞬間ともとれる。
敢えて結末に曖昧さを残して解釈の余地を与えるのは映画的だけど、この作品に関してはそこを決しない限り作品を通した主人公のキャラが定まらないんじゃないかなと思います。
痴呆気味の老人に「きれいですね、偽物なのに」と突如無礼かつ不自然な台詞を言ってみたり、「行くべき所に行くだけです」と言った直後に走って逃げてみたりと正直みていて不可解な行動が多いです。
その行動への理解を促すのは結末しかないでしょう。
吉田監督の作家性としては序盤から精緻な演出を着々と積み上げていって最後のフィナーレでどーんと爆発させるって感じだと捉えていて今回もその型だと思いますが、やっぱり前作桐島ほどは上手くいってないかな、という印象です。
しかし邦画、その中でも人間を描く物語に関しては、いかに良い演技を撮るかが大事であり、それこそがメッセージ性を強め、ストーリーの粗を目立たなくさせると自分は思っているので、その意味では十分に及第点と言える作品だと思います。