「一線を越えること」紙の月 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
一線を越えること
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小林聡美の目が怖かった。何もかも見透かすようであるのだが、かなり長い間見過ごしていたので、勝手にびびっているだけで実はそうでもなかったのかもしれない。
ボケたお婆さんをだました時に「偽物なのに」「分かってるわよ」の会話はゾッとした。
自宅が証書の偽造工場と化して、20年前の機材で頑張って作っているところは面白かった。あそこはもっと掘り下げて欲しかった。プリントごっこをあんな風に悪用しているのもすごく面白かった。
金の使い方が物欲や享楽的な方向で、人間性にガッカリするところはあった。もっと愉快な夢のある使い道を示して欲しいのだが、そもそもそういうタイプの人は銀行に勤めないし、横領もしないのかもしれない。安っぽくて、応援しづらい。享楽的に物欲を満たしたことがないから分からない。ラブホテルがだんだん高そうなラブホになって、帝国ホテルみたいなところにまで至るのが面白かった。
全編通じてハラハラし通しでとても面白かった。浮気や横領の一線を越える場面が特に、いちいち、声を漏らしそうになるくらいだった。我々の日常に、超えてはならないけど、いつでも簡単に超えることができる一線は存在していることを示す、恐ろしい映画だった。
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