「食材の名演技。」リトル・フォレスト 夏・秋 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
食材の名演技。
深夜・休日のグルメ番組が大流行している。
筆頭格はあの「孤独のグルメ」なんだろうが(まさに胃袋テロ!)
実はこういう番組が好きで「深夜食堂」時代からずっと見ている。
(最近始まった「本棚食堂」も面白いぞ)
今作が上映されるのは知っていたけど、原作は知らない。
東北の山村で自給自足…という宣伝に、「海ごはん山ごはん」?
なんて思ったけれど、ほぼそれに近い^^;
特に田舎に興味がなくても、特に料理が好きでなくても、
スッと入れる不思議な感覚の映画である。うーん…映画か?と
思えるくらいか。一季節ごとに一エンディングが入るという、
変わった趣向なので、これは松竹が深夜放送を目論んで、
最初からこんな形式で編集を完成させたのでは?と思ったり。
しかし季節の移ろいに美味しそうな手作り料理のオンパレード。
退屈?と思いきや、冒頭からずっと橋本愛のナレーションが入り、
その説明を聞いているだけでも飽きない。
まぁツッコミを入れると、家の外見と内見の大違いというか^^;
あの山村であの家の綺麗さはないだろう?と思うTV向け映像、
主人公のファッションですら、もう山ガールの美に達している。
本当の農家を体験している人からすれば、うーん?と思うところ
だろうと思うが、今作は農業に焦点を置きながらそれだけでなく、
この食材でこんな料理ができる!素晴らしさを次々と披露する。
見ている間中、ほーっ。とか、へぇ~。なんて頷いてばかりいた。
食べることが大好きな人間にとって、新鮮な食材を前にして
四の五のいうんじゃねぇ!!といったところだ。目から美味しい。
淡々と捌いていく橋本愛の演技も自然体で、気持ちがいい。
演技とも実技ともいえるその生活にスッと馴染んで、この子は
初めからこの山村に住んでいたんでは?と思わせるほどだ。
元々この家が生家、という設定なので、農業していた母親から
あらゆる生活技を教わったとはいえ、手慣れた手捌きと演技。
人気のある若手女優だが、私は初めてこの子に魅力を感じた。
一作品ほぼ一時間で二作ずつ。次回は二月に公開だそうだ。
映画という意味で確かに変わっているが、非常に興味深い作品。
(トマトの強さと弱さを自身に擬えるところなど、比喩表現も豊か)