「ヒーローは命懸け。」イン・ザ・ヒーロー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒーローは命懸け。
スーツアクターの経験がある唐沢寿明を主人公に迎え、
「蒲田行進曲」さながらの舞台裏を見せる人情アクション。
子供の頃、こういったスーツアクターさんの演技を見て
興奮していたクチには、何とも懐かしさが満載で楽しい。
顔出し主演俳優の裏で、たゆまぬ努力を続けながらも、
なかなか表舞台には立てない、難しさと歯がゆさと。
知り合いにもいたけれど、多くの夢を抱えた若者たちが
生活のために俳優をあきらめて、会社員になっていく。
表舞台に立てるのは、本当に一握りの人達なんである。
後半で唐沢が命懸けのアクションを依頼され、これこそ
千載一遇と喜んで受けるのに対し、家族をはじめ周囲は
彼の身を案じて反対する。夢を叶えたいのは分かるが、
それで命を落としては元も子もない。どちらが大事かと
いうことになるが、これは本人にとってはチャンスとしか
映らないはず。それが欲しくて25年も頑張ってきた男の
想いはなかなか伝わらない。「夢」の実現は、必ずしも
周囲を幸せにしないのだ。
唐沢をはじめ、新人役の福士君他、俳優陣も頑張っており、
皆がスーツを着て、それを脱いだ時の表情などが楽しい。
タッパがないから女性役という寺島もスーツの経験があり、
経験者は皆、懐かし~く演じたのだそうだ。
スタッフさんや裏舞台の人々もよく描かれていたと思う。
いかに多くの人間が関わってひとつの作品が完成するか。
ただ、それにしてもこの題材で何でこんなに?と思うほど
どこかテンポが悪い。いい話なのにツッコミどころ満載。
ノンワイヤー、ノーCGのはずが、アレレ?と思う箇所も
かなり目立つ。最終の大立ち回りでは、松方弘樹と互角に
渡り合う唐沢メインの見せ場なのに、間延びしてしまって
緊張感が出ない。本来ならば血の涙が出てもおかしくない
ほどの場面で脱力させてしまう演出では演じる俳優たちが
気の毒で仕方ない。そこが「蒲田行進曲」との圧倒的大差。
(未だに姿勢を崩さずアクションができるところ、さすがだ)