「自然の怒りを前にして、人間に為す術なし。」白鯨との闘い ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
自然の怒りを前にして、人間に為す術なし。
イイ!海洋冒険モノが好物な自分としては最高の体験でしたね。やあぁあ、イイ!イイですよ!だだっ広い海原を突っ切る一隻の船。海中を群れなして優雅に泳ぐ海豚や鯨。陽光を浴びキラキラと輝きながら波立つ水面。荒れ狂う嵐に立ち向かう乗組員達。そして、そしてです。白鯨ですよ。やっぱり白鯨ですよね。禍々しきその姿。でかさ。異形さ。
全てが壮大。まさに“壮大”という言葉がピッタリと当てはまるスケール感。海の「美しさ」やら「恐ろしさ」やら「荘厳さ」、果ては自然へ無防備に放り込まれた人間達の、極限状態により突き付けられる「命」の価値観、重さ、選択、そういったものを一括で味わえる作品となっております。ます。
ますが。が、一点ちょいとね。気になっちゃったことがありまして。これね、なんていうか、そのお……タイトル詐欺じゃないか?という。
邦題が『白鯨との闘い』となっていますが、別に白鯨と闘ってはなくないか?という。いや、んーーそれも違うのか。えーっと、闘ってはいるんですかね。ただ、全く勝負になってないというか、一方的にやられてないか?という。
自分てっきり、白鯨と人間との手に汗握る!息の詰まるほどの攻防戦!的なものを想像していたので、大いなる肩透かしを喰らいましてね。もう闘うとかどうこうするとかの話じゃなくて、白鯨のそのサイズが規格外でね、勝負もクソもないんですよ。ハナから善戦なんて望めないという。ま要するに逃亡劇なんですよね。逃亡劇。
タイトル間違ってるよなあ、と。『白鯨からの逃亡』とか、その辺りで落ち着いといてくれれば肩透かされることもなかったよなあ、と。邦画のタイトル付けって作業も色々難しいところはあるんでしょうけど。
でも、まあそれを置いといてもね、冒頭で言った通り「イイ!」映画であることには変わりないので。海洋冒険モノ、漂流モノ、ヒューマンドラマ、といった方向性で観ればこの上なく素晴らしい体験が待っていると。それは保証致します。はい。