劇場公開日 2016年1月16日

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「闘っているのは鯨とだけじゃない!」白鯨との闘い ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5闘っているのは鯨とだけじゃない!

2016年1月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

ロン・ハワードという監督は極めて律儀な人だ。「アポロ13」「ビューティフル・マインド」「シンデレラマン」など、スペクタクル巨編に脚色しようと思えばできる題材を用いながらも、実話というところに繊細な配慮を怠らない。結果として、娯楽性を保ちつつも、リアリズムを損なわない作品を生み出している。

本作においても監督の律儀さは遺憾なく発揮されている。邦題はミスマッチだったかもしれない。なぜなら、主人公らが闘う相手は鯨だけではないからだ。いや、可視化できる具体的な相手は鯨のみというのが正しいのかもしれない。海、権力、プライド、飢え、不安など捕鯨という仕事を通じて、彼らは様々なものと闘うことになる。

鯨と闘うスペクタクル性の高い前半に対し、目に見えない恐怖と闘う後半という構成は物語のテンポを損なう反面、異様なまでのリアルさを演出している。これは山岳映画「生きてこそ」の海洋版と言っても良い。死んでいく者の無念さ、生き残った者の罪悪感、人間の生への執念と死への恐怖がまざまざしく描かれているのである。

しかし、それらの描き方が上手い故に、白鯨との最後の闘いが実に惜しい。壮絶な死闘を経て迎えるその結末に主人公と鯨との強烈なシンパシーが描かれて良かったのではないだろうか?実話を過度に脚色しない監督のスタンスが裏目に出てしまったような気がしてならない。

傑作と呼ぶには今一歩届かなかったように思えるが、海洋スペクタクルとして、史劇として、そして、人間の生きる力を描いた映画として、見応えのある一作である。

Ao-aO