「それでも父はやってない」ジャッジ 裁かれる判事 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
それでも父はやってない
勝つ為なら手段を厭わない弁護士ハンクは、母の死で久し振りに帰郷、判事で厳格な父ジョセフとは長年確執があった。そんな父が殺人容疑で逮捕され、弁護する事に…。
ロバート・ダウニーJr.&ロバート・デュヴァル共演。
アメリカでは興行・批評共に鈍かったようだが、何で?何で?
見応え充分の法廷サスペンス&父子ドラマ。
被害者は、父とは因縁がある男。ハッキリ言って、“クソ野郎”。
父は当時の事を“覚えていない”。
故意か、事故か。
疑わしき点が幾つか。
さらに、父には家族にも隠してきた秘密が…。
ハンクは父を無罪にする事が出来るか…!?
法廷サスペンスとしても面白いが、一味スパイスとなっているのが、弁護される者とする者が父と息子で、溝がある事。
約20年振りの再会だと言うのに、父は他人行儀に握手するだけで目を合わせようともしない。
やっと口を聞いたかと思えば、出るのは辛辣な言葉だけで口論になる。
父は故郷の町で40年以上も判事を務め信頼を得ている大物だが、独善的。
一方のハンクも独善的な所も。
似た者同士なのだ。
そんなハンクは父と同じ法の世界へ。自分の中に何処か父の存在がある。
同じ法に携わる者同士でありながら、考えはまるで正反対。
弁護を通じて、息子は父を、父は息子を、少しずつ受け入れ始める。
二人の関係が感傷的になり過ぎないのもいい。
大作アクションへの出演続いたロバート・ダウニーJr.久々のドラマ映画。
元々演技派として注目されたので、本来の持ち味を発揮。
ちょっとトニー・スターク風キャラを加味しつつ、円熟の演技を披露。
オスカーにノミネートされたロバート・デュヴァルはさすがの重厚名演。
画面に出るだけで彼の土壇場になる。
誇り高い判事の顔、頑固で厳しい父の顔、ある秘密を抱えた老人の顔…哀愁をも巧みに滲ませる。
父と同居する長男と三男の存在も、父子ドラマに広がりを与えている。
検事役のビリー・ボブ・ソーントンは初登場シーンだけで一筋縄ではいかないやり手を感じさせる。
ヴェラ・ファミーガ演じるかつての恋人は少々蛇足だったかな?
評決は、無罪とも有罪とも捉えられるモヤモヤ感が残る後味悪い結果に。
ハンクには望まぬ評決だったろうが、父はひょっとして望んでいた評決だったように思う。法に携わる者として。
父子関係には一定の評決が。
最高の弁護士に父はある弁護士の名を挙げ、息子は父の背を見て育った。
折り合い悪くとも、されど親子。