「フィルムが秀逸」グレート・ビューティー 追憶のローマ ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
フィルムが秀逸
65歳になるまでセレブとしてパーティに明け暮れ、退廃的に時間を浪費してきたであろう主人公が、ふと「望まぬ行為に時間を費やす暇はないのだ」と呟く。
美しいローマをあてもなく彷徨う晩秋。
そして、人生は何をしていても過ぎ行くのだ。そう例え「この人達は、何も出来ない人達なのよ」と言われても。後悔をしたとしても。
フィルムはここ最近の監督では、トップクラスに入るほど秀逸だと思うのですが、観念的な作品なので観る人を選ぶと思います。
ごまかしのきかない年齢に差し掛かった時に、主人公の吐くラストの言葉は、生きることに嫌でも向き合い、遅くなりながらも生きることを始めようとしている様に思いました。人生は永遠ではなく、慰めがあるわけでもなく、知らなかったやらなかった事が多すぎて、それでもそれでも自らに蓋をして、諦観することは到底出来ない。気がついたのが、晩秋に差し掛かった時であっただけ。いや、本当はずっと分かっていたことだっただけ。
「幕切れは決まって、死である。
全ては生きるという困惑のもとに埋葬される。私は彼岸には関わらない。こうしてこの小説は始まる。」
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