「そして、見つけた。」ぼくを探しに ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
そして、見つけた。
シルヴァン・ショメ監督の『イリュージョニスト』は自分、本当に感服したというか、かなりのフェイバリットでして、コミカル調なアニメーションでありながらも、ここまで切なさや辛辣さ、悲哀に満ちたエッセンスを詰め込んでくるか!と、劇場で鑑賞した時にゃあ軽く衝撃を受けたもんです。こりゃ稀代の才能だなと。そのショメ監督が今回は実写映画に挑んだというんですから、まあ観ない手はない訳ですよ。
いやぁ、うん。すばらしかったです!この監督にとっちゃフィールドが実写だろうがアニメーションだろうが関係ないんですね。
まず設定がユニークじゃないですか。二歳の頃に両親が不審死を遂げ、それがショックで喋れなくなったまま育ったピアニストのポール君(33歳)。彼がこの映画の主人公でして。この人物設定からしてもう興味惹かれますよね。ポール君を引き取ったのが姉妹の伯母さんで、彼は今も彼女らと三人暮らし、ってのもなかなかパンチ効いてるでしょ。ある日、そのポール君が偶然に出会った中年女性から、謎のハーブティーを飲まされたのを切っ掛けに、閉じていた筈の過去の記憶が少しずつ蘇り、彼の日常が変化していく……的な。
この話のそういった妙味、風変わりな設定を踏まえて観てると、アニメチックな味わい、雰囲気がふんだんに散りばめられてることに気付くんですよ。実写の世界にアニメーションの展開と手法を持ち込んだ!というと少し語弊(少しどころか大分かも)があるかもしれないんですけども。や、別にCG多用してる訳でもないし劇中にアニメを放り込んでるってんでもないんです。んー何て言えばいいんだろう。兎に角、まず言えるのがカラフルだ、てことで。しかしそこに「わざとらしさ」や「あざとさ」を感じないというか、ナチュラルな色彩で、若干の褪せた色合いとでも言えばいいのかしら。その中で一枚絵の様にカッチリはまった構図が出てきたり、アパルトマンの一室に野菜畑があったりの非日常的な風景、赤ん坊視点のPOV状態でシュールなミュージカル劇が繰り広げられたりして。
これね、アニメーションやってた人だから出てくる発想だと思うんですよ。実写的な制約というかリミットを自ら設けてないというか。
物語の展開なんかもね、自由じゃないですか。自由なんですよ。だけど伏線の張り方はしっかりしてるし。あっちこっちでちょいちょいフラグ立てて、ちゃんと回収してる。
何だか不思議で、面白い映画を観たな、という満足感。いや楽しませてもらいました。もっとあれこれ感想言いたいんですが、キリがないのでwここまでにしておきます。