「型破りの傑作」ゴーン・ガール moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)
型破りの傑作
映画を見ている最中、語り口がありふれた物語と全く違い、どう着地するか全くわからない。そんな「ただの映画」を超えた特別な体験を自分がしているという事を感じさせてくれる作品が時にある。「ゴーン・ガール」も確実にその一本だ。
物語自体が「よくあるサイコ・サスペンス」という予想を超えてくるという時点で十分すばらしいのに、それだけでなくこの物語自体が「どうやって結婚を上手く続けるか」のメタファーになってるという二重性が見事。
それに加えて監督デビッド・フィンチャーの成熟した演出力が圧巻。最早過去作のようにCGを多用したギミック的な演出など全くなく、オープニングタイトルで派手に観客をアジるような事もしない。
必要な情報を美しい絵でじっくり見せ、テンポの良い編集でぐいぐい物語を引っ張っていく。つまり正攻法で「巧い」。
単なるシリアスな物語にするのでなく、ブラックコメディにした事も前半の「シリアスなサスペンスドラマ」という印象から次の展開での意外性が増し、更に物語が面白くなっている。
「ソーシャルネットワーク」のように、フィンチャーの作品では人間同士のディスコミュニケーションが描かれる事が多いが、この「他人を理解する事の不可能性」が見事に作品テーマに繋がっている。
つまり、相手の事がわからないからこそ、理解する努力を怠らず、相手を簡単に型にはめるなということ。決して結婚自体を否定している映画ではなく、夫婦の関係性に言及した「アイズワイドシャット」に似たテーマの映画だと思う。
この映画、恐らくは女性の方が見ていて復讐劇としての爽快感というか、「ざまあ見ろ」というカタルシスがあるのではないだろうか。
なぜなら映画においても現実においても、女性の方が理想の「型」を押し付けられやすい(まあ積極的にそれを演じてる人もいるけどね)立場にあるのだから。その点では前作の「ドラゴンタトゥーの女」とも共通したテーマがあると思う。