「ラストの熱唱には完全ノックアウト!ドーナツとは違い甘くもジャンクでもない感動作」チョコレートドーナツ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
ラストの熱唱には完全ノックアウト!ドーナツとは違い甘くもジャンクでもない感動作
この作品は知的障害を持つ少年が関係する作品と言う位の情報だけだった。「チョコレートドーナツ」と言うタイトルに魅かれて観たのが主な理由で、前情報が無かったので本作品のラストには本当に衝撃を受けてしまった。
仕事がオフの日に「ネブラスカ」「世界の果ての通学路」を続けて観た。この2作品を観終えて、涙は既に出尽くしたと思っていた。
しかし、留めにこの「チョコレートドーナツ」でまたまた号泣。涙無くしては語れない3部作になってしまった。不思議な休日だった。
私は本編を観る迄は極力その作品に付いての情報を観ないように努めているのだ。
先入観を持って映画を観る事でその映画本来の良さを観落としたりしない為だ。
映画を観る決め手は監督と俳優、或いは原作や脚本家が誰であるかを参考にするけれども基本的には映画館での予告編や、フライヤーの写真で作品選びをしている。フライヤーも文字を細かくは読まないのが基本姿勢だ。
特にこの「チョコレートドーナツ」の物語は差別と偏見が渦巻く1970代アメリカで実際に起きた事件を基に制作されている真実の重みが胸を付く作品だ。更にこの映画が描く世界は、ゲイ差別と障害者差別と言う、ダブルマイノリティーの世界。如何にこの主人公達は大きな差別の中で生き、常に偏見の対象になっていたかが痛切に伝わってくる。
障害者が登場する作品の中では「八日目」と言う作品が最も好きだった。故淀川長治氏の解説付きで「八日目」を観た日の事を今も鮮明に憶えている。他には「レインマン」や「アイ・アム・サム」など感動作も多い。
一方ゲイピープルを描いている作品も本作以外にも多数良作が有り、本作と時代背景的に同時期の出来事を描いている作品と言えばガス・バン・サント監督の秀作「ミルク」が有る。そしてブロードウェイで度々上演された「トーチソング・トリロジー」も映画化されて素晴らしい作品だった。
この日私は「ネブラスカ」を観て家族の絆は理屈では無くやはり切っても切れない強力な繋がりが有ると思い、家族を持つ事の平凡な生活の真実の有り難味に涙したが、この「チョコレートドーナツ」を観ると人間の愛の底力のようなものを感じる。それは単に血の繋がりだけで結ばれるものだけでは無く、血族的には全くの他人であってもこれは、やはり一つのファミリーで、家族としての素晴らしい愛溢れる環境が他人同志の生活の中からも生れる事に号泣してしまった!
果たして、この物語が描く時代から30年40年を経た今の時代を生きる私達の心の中に、あらゆるマイノリティーの人々に対する差別の心は自分の中に無いと言えるのだろうか?と思わず自己に問いかけて見ても、差別する心は全く無いとは自信を持って言えない自分もいる。この作品は口コミでロングランしているので、日本から偏見と差別の無い、世界の平和実現が起きると素晴らしい社会現象だよねと願い、祈るばかりです!