「こんなもんかなぁ??」ジョーカー・ゲーム えまさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなもんかなぁ??
原作はジョーカーゲームからラストワルツまで読んでます
今回の映画は「ロビンソン」や「幽霊」などの原作のシーンをつまみつまみ繋げているストーリーでした。原作ファンとしてはニヤリとしてしまうシーンもあり、それなりに楽しめました。
しかし、違和感がありました。この原作を忠実に再現して映画化するのは難しいことかもしれません。ラストワルツの「ワルキューレ」で逸見が言うように、「スパイは目立っちゃいけない。地味でなくてはいけない。」という言葉の通り、主人公がちょっと派手…というか目立ちすぎかなと。異国で全身真っ白じゃ目立ってしまう。原作では目立ってはいけない異国で走ることさえもタブーとされてます。また、度々「グレイリトルマン」と表現されるように、つまりスパイは目立ってはいけないのです。
また、逸見がいうように「地味なスパイ映画は面白くない。スパイにはかっこよくあってほしい。」確かにその考えも否めません。それを形にしたのが007シリーズではないのでしょうか。女がボンドガールとしていて、車を乗り回し、任務を遂行するボンドのような男がイメージするスパイです。ジョーカーゲームの原作はそれとはかけ離れています。しかし、読者たちは「死ぬな、殺すな」の教えのもとに任務を遂行する、ジェームズボンドとはほぼ真逆の、地味だけどかっこいい主人公たちの活躍を楽しんでいました。
結論として、原作のジョーカーゲームは誰もがイメージする007のようなスパイとはまた違います。女の存在もなく、地味だけど正確に、誤算を計算のうちに入れるような頭脳をもったスパイたちです。
原作ファンが今回の映画を観ると違和感があるかなと思います。結城中佐の教え通りでないところがあるし、何よりも原作を越えて007よりになってしまったこと。逸見の言う「地味なスパイ映画では誰も観に来ない。」の意味がよくわかります。だから、ジョーカーゲームの原作を忠実に再現するなら、地味な映像になることを覚悟しなくてはならないでしょう。
今回の映画は原作を忠実に再現していないということを大目に見れば面白かったと思います。