グランド・ブダペスト・ホテルのレビュー・感想・評価
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ザ・何も考えていない決まり文句「おもちゃ箱をひっくり返したよう」(笑)
スタイルが変わらず、やってこれることは素晴らしいことだ。ましては超豪華キャストに支持される、ということは結果も伴っている、と言ってもいいだろう。
ウェス・アンダーソンはその代表格のような存在。本作も始まって、もう誰の映画か、なんてすぐわかる。
でも正直、この監督の、この世界に俺がなじむことはこれからもない。
前作「ムーンライズ・キングダム」でも思ったことだが、アンダーソンの十八番の「シンメトリーな画面」はあえての四角を意識しての、狭い空間世界を作り出すゆえ、ややもすれば、退屈な画面に陥りがち。
そのため、派手な音楽、急展開なストーリーの盛り上げを思いっきり邪魔をすることもしばしば。
音楽はめちゃくちゃ走っているのに、画面は止まっている。
ましてや、主なパートは画面自体が正方形になっているので、なおさら。
今回もそれも「あえての」演出とは思うが、徹底してワンパターンなので、まあ、カワイイネ!もさすがに飽きもくる。
どこぞのお偉い評論家が、おもちゃ箱をひっくり返したよう、って言ってるようだが、いやいや、違うでしょ。
そうじゃなくって、「おもちゃ箱に顔を突っ込んでる」って感じ。
飽きと退屈は、息苦しい、と言ってもいいかもしれない。そのうち違う意味で気持ちよくなれるしね。
それと英国的ブラックジョークって、正直なんのことかわからないが、前作「ムーンライズ・」も気持ち悪い性的描写があったが、今回は、もうちょっとわかりやすいテーマなのに、毒の盛り方が上滑りをしている印象。
また豪華キャストについても、前作同様、正直その意味が客寄せパンダ的に一層感じる
必要ねえし、むしろ、なぜか困る。
今回の収穫は、女性客を動員する、という点において、とても分かりやすい形で結果が出ているということ。
また今回諸事情にて、スイーツに着目したが、そんなに映画の中では、活きている気はしなかったが、ピンクとスイーツのイメージリンクはストレートで良かったと思う。
映画の内容以外の話題づくりで映画を観る、というのも今後もっと力が入る戦略かもしれない。
追記1
レイフ・ファインズの佇まいとエイドリアン・ブロディの顔のハマリ具合がツボだった。
追記2
音楽は楽しい。でも今回のエンドロールも前作とおんなじようで、そこまで徹底してもなあ。
人生の可笑しさ、面白さ
第二次世界大戦前のヨーロッパ(国としてはズブロフカ共和国という架空の国だが)が舞台、しかもステファン・ツヴァイクに影響を受けた作品とあってもう少し重苦しい話かと勝手に想像していたが、全く違った。あるホテルマンとその助手の大冒険譚で、ジェットコースターのようにストーリーがどこに転がるか分からない面白さ、それを生真面目に演じる豪華俳優陣(世界的に売れる前のレオ・セドゥもいる!)に引き込まれ、最後まで飽きることがなかった。
時代が何層にも重なる物語構成、画面に向かって早口で長台詞を話す俳優たち、カラフルでポップな舞台装飾等、ウェス・アンダーソン監督の映画作りの拘りがこれでもかというほどよく出ており、ひと目見たらこの監督の強烈な個性を忘れることはできない。
結局最後は何が言いたいのか分からないという人もいるかもしれないが、個人的にはこの映画から、(グランド・ブダペスト・ホテルのように)栄華を極める人・物も最後は廃れるのであり、万物には始まりがあって終わりがあるという諸行無常を感じ、儚いからこそ人生は面白いのだということを再確認する機会になったように思う。ちょっと考えすぎかもしれないが。
好きな人は好きかも!こだわりの映像は圧巻...
本編を視聴する前は、予告からすると、おそらくは映像美が中心の映画なのかと思っていた。
実際、様々な"真正面の画角"から繰り出される映像のこだわりは圧巻だった。
照明の角度や人物、物の配置など、展開される場面自体が絵画のよう。
しかし、ストーリーがドタバタコメディ風で結末もあっけない。
最後急にまとめてきた!!と思わざるを得ないぐらい。
個性に触れるという点では、感性が豊かになるかもしれないが、映画として満足度は人の好みによるかも。
こんな映画もたまにはいいか、程度で鑑賞するのが良いかもしれない。
グランド・ブダペスト・ホテルにこめられた古き欧州の煌びやかさと、その崩壊
ウェス・アンダーソン 監督による2014年製作(100分/G)のアメリカ映画。
原題:The Grand Budapest Hotel、配給:20世紀フォックス映画、
劇場公開日:2014年6月6日。
主に第二次大戦前の東欧においての豪華ホテルを舞台としたコメディタッチの映画。確かに、美術や衣装、デザイン等は見事とは思えた。ただ、殺人事件のミステリー的な物語展開を期待してしまって見たせいか、自分にはあまり面白くは無かった。
原案・製作・脚本・監督のウェス・アンダーソンが主に何を描いているのか、描きたいのかが、自分には十分に掴みきれなかったせいかも。ファシストの横暴、それとも若い男女の恋愛、ホテルボーイと経営者の師弟愛、おもてなしとして客と寝るホテル経営者グスタブ(レイフ・ファインズ)の数奇なドラマ、ベルボーイのゼロ(トニー・レボロリ)の出世物語、ホテルを舞台とした「シャイニング」等の映画へのオマージュなのか?
と書き進んだところで、この映画は元ネタとされるオーストリアのユダヤ人作家シュテファン・ツヴァイも含めて監督憧れの古き欧州の煌びやかさと、その崩壊を描いてるのかなと思えてきた。ただ、ゼロの妻アガザ(シアーシャ・ローナン)の頬にある大きなメキシコ形の痣の意味が、自分には大きな謎である。
キャスト
監督ウェス・アンダーソン、製作ウェス・アンダーソン 、スコット・ルーディン、 スティーブン・レイルズ 、ジェレミー・ドーソン、製作総指揮モリー・クーパー 、チャーリー・ウォーケン 、クリストフ・フィッサー 、ヘニング・モルフェンター、原案ウェス・アンダーソン 、ヒューゴ・ギネス、脚本ウェス・アンダーソン、撮影ロバート・イェーマン、美術アダム・ストックハウゼン、衣装ミレーナ・カノネロ、編集バーニー・ピリング、音楽アレクサンドル・デプラ、音楽監修ランドール・ポスター。
出演
レイフ・ファインズムッシュ・グスタヴ・H、F・マーレイ・エイブラハムミスター・ムスタファ、マチュー・アマルリックセルジュ・X、エイドリアン・ブロディドミトリー、ウィレム・デフォージョプリング、ジェフ・ゴールドブラム代理人コヴァックス、ハーベイ・カイテルルートヴィヒ、ジュード・ロウ若き日の作家、ビル・マーレイムッシュ・アイヴァン、エドワード・ノートンヘンケルス、シアーシャ・ローナンアガサ、ジェイソン・シュワルツマンムッシュ・ジャン、レア・セドゥクロチルド、ティルダ・スウィントンマダムD、トム・ウィルキンソン作家、オーウェン・ウィルソンムッシュ・チャック、トニー・レボロリ若き日のゼロ、ルーカス・ヘッジズルーカス・ヘッジズ。
すれ違うはずの人がすれ違わないとき、物語がうまれる。
ウェス・アンダーソン監督作品は、絵本のような雰囲気が個人的に好みではなかったのだが、本作は楽しめた。
ストーリーは比較的シンプルで、名門「グランド・ブタペスト・ホテル」の初代コンシェルジュであるムッシュ・グスタヴ(レイフ・ファインズ)と、その弟子であるゼロ(トニー・レヴォロリ)の冒険を描く。
グスタヴは、優秀なコンシェルジュで、宿泊客の中には彼を恋人のように思っている人も多くいた。その中のひとりであるマダム・D(ティルダ・スウィントン[)は、ホテルを去るときに、ひどく不安を感じるので一緒に来てくれないかと頼んだが、グスタヴは断る。
その後、マダム・Dは毒殺される。彼女の不安が的中したのだ。グスタブはゼロとともに、マダム・Dの葬式に向かう。そこには遺産を狙う親戚が勢ぞろいしていた。代理人のコヴァック( ジェフ・ゴールドブラム)が遺言書を読み上げる。そこには、グスタヴの名前も入っており、名画「少年と林檎」を相続すると記載されていた。親戚でもないグスタヴに途方もない価値のある絵画が譲られたことで、その場は騒然となる。暴力沙汰となり、その場を立ち去ったグスタヴは、「少年と林檎」の絵画を取り外して、立ち去った。もちろん、それで済むわけがなく、マダム・Dの息子ドミトリー( エイドリアン・ブロディ)は、殺し屋のジョプリング( ウィレム・デフォー)を差し向ける。
といったもの。
ストーリー展開はかなりスピーディーで、うまくまとめたと思う。
製作費は2500万ドル(37億円)で、興行収入は1億7200ドル(250億円)。30 億円が大ヒットの目安だとすると、めちゃくちゃ売れた、といっていいだろう。
こうして書くと、人気のある監督が、スター俳優を大量に使って撮った個性的で楽しい大ヒット映画、という感じになるのだが、本作で語られるのは「孤独」についての考察だ。
登場人物がみんな孤独なのだ。グスタヴの家族は登場しないし、ゼロは両親を殺されて国を逃げてきた移民。マダム・Dも親戚はたくさんいるのだが、孤独だったからこそグスタヴを愛したのだった。
本当の家族との愛はなくても、孤独な人々がつながり、助け合う。
本作で語られる人とのつながりは、本来つながらないであろう人々のつながりだ。ホテルを統括するコンシェルジュと移民のボーイ、そのコンシェルジュと富豪の老婆、そのコンシェルジュとナチス的な軍隊の司令官、またはそのコンシェルジュと収容所の囚人たち。ボーイと、お菓子屋で働く娘。
こういった、顔は知っているけれど、すれ違うだけであろう人々が、不思議な縁でつながる。
本作が公開されたのは2014年。撮影されたのは2013年。そう考えるとシナリオは2012年あたりの世界情勢が影響しているのではないかと思う。当時は世界の指導者が変わり、ユーロ圏の債務危機、シリアの内戦、といった出来事があり、不安に包まれていたのではないかと思う。
そういう時代に「孤独とは、誰ともつながらないことではない」というメッセージを伝えるのが、この映画の目指したところなのではないか。
映画は人間が作るものだ。そこには作られるための意図があり、メッセージがある。それを自分なりに読み取るというのが大切なことだと思う。
独特の世界観
この監督の映画を観るのは初めてである。ヒッチコックのミステリー映画をバズ・ラーマンがリメイクしたような感じの作品。
サスペンス・コメディというジャンルの映画は少ないと思うが、その中では出来の良い作品である。ただ最後はなんともあっけない締めくくり方だ。流れから言ってハッピーエンドにするべきでしょう。
フォッグとパスパルトゥー
『80日間世界一周』だ。
フォッグとパスパルトゥーを連想する。
導入部の相関関係が分からなかったので、もう一度見た。名前から察するに、ハンガリー帝国の話だと思うが、ポリティカルな部分を考えずに見た方が良い。沢山の方々指摘しているように、画面のサイズが切り替わる所がみそだと思った。それで、ドッド方式ワイドスクリーンで上映された『80日間世界一周』を思い出した。
ひとつひとつのシーンが絵画のごとく
第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作。
第72回ゴールデングローブ賞作品賞(ミュージカル・コメディ)受賞作。
Disney+で鑑賞(吹替)。
ウェス・アンダーソン監督の映画を初めて観ました。こだわり抜かれたアングルや鮮やかな美術がおしゃれ。ひとつひとつのシーンが絵画みたいに計算し尽くされていて無駄も隙も一切無い。懐かしさまで喚起させる画づくりに魅せられました。
グスタフ氏とゼロの、ユーモアがたっぷりあって、友情に満ち、示唆に富んだところもあるやり取りが良い。キャストも豪華で、それぞれ個性的なキャラクターを熱演していて魅せられました。ミステリー仕立ての物語も大変面白かったです。
Nest of Vipers. 不思議な魅力に満ちた作品
一人で勝手に「シアーシャ・ローナン強化月間」の第三回は「グランド・ブダペスト・ホテル」です。あら?でも、シアーシャ・ローナン大して出てなかったですね。出てたシーンも可愛かったですが、演技は通常運行といった感じでした。
本来の趣旨とは外れてしまいますが、それでも本作は不思議な魅力に満ちた作品です。ウェス・アンダーソンって面白い監督ですね。話を見せるのが上手いというか。まさかホテルから脱獄劇に変わり、殺人犯との追いかけっこや銃撃戦まで見せてしまうとは。ここ!っていう盛り上がる所がなくても、話が上手く転がって行くので観るのを止められない、そんな作品です。
キャストが異様に豪華です。グスタヴ役のレイフ・ファインズは真面目な役が多い印象でしたが、コメディイケるやん!あの飄々とした感じがなんとも上手い。ティルダ・スウィントン出てたっけと思ったらまさかのマダムD!レア・セドゥいたっけ?と思ったらメイド!ビル・マーレーも含めて皆さんちょい役過ぎるやろ!
やー、でもこれだけ豪華な役者を集められるのも監督の人徳なんでしょうね。正直シアーシャ・ローナン目的としては物足りないですが、作品としては十分面白かったです。
映画らしい映画
きれいな絵本を読んだ気分になれた映画。
映像美を主張しない、美しく流れる映像とコミカルな演出。
魅力的なキャラクター達。
テンポもいいし笑えるし好きな映画。
見てて満足というか、うっとりした気分になれた。
出演者・演出・映像・音楽が良いのに、物語は普通
総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:80点|演出:80点|ビジュアル:75点|音楽:75点 )
登場人物とそれを描く独特の演出が上出来。そして質感の高い映像と音楽もその演出の一部として軽快さを出していた。
物語はそうたいした役割はない。だが突然のグスタブの最後や、ホテルの謎であり幸せの源泉だった妻子を失ったことをあっさりと片付けられたのは不満。もっと違う描き様があったのではないか。さんざん途中まで登場人物の波乱の物語を展開しておきながら、彼らの最後や重大な出来事をろくに描きもせずに片付けてしまうのはいったいどうしたものか。上手くすればしんみりとした感動をもたらすことも出来たろうに。
the society of the crossed keys
架空の国の架空のホテルを統括する名物コンシェルジュGustaveと彼を師と仰ぐロビーボーイZeroの物語。
おもてなしという名のホストのような仕事?までこなすGustave。詩と女性をこよなく愛し、収監されても逃走中でも品性を保つ(^O^)。小うるさいけど憎めないキャラ。答えに戸惑いながら目をキョロキョロさせるZeroと良い師弟コンビでした。
登場人物が皆個性的で面白いです。スキンヘッドで全身落書きみたいな刺青姿なのに、絵が上手いと褒められ少し照れる囚人ボスLudwigが微笑ましかった(^-^)。
"The Royal Tenenbaums"に似てると思ったら同じ監督ですものね。本作のほうがずっと面白かったです。所々エロ・グロのスパイスが唐突に放り込まれる(^^;)、一貫したテイストのコメディで、細部にまでこだわって創り込まれた作品だと思いました。(ただこんなに完成度が高いのに、何故誰でも気付きそうなAgathaの肩紐の間違いを撮り直さないのか不思議ですが…。)物語の閉じ方が少し残念かな。
Ralph Fiennesがハマリ役でした。一時は実生活でも熟女キラーでしたね。(舞台での共演を観ましたがラブラブでした。)
"Rudeness is merely the expression of fear. People fear they won't get what they want. The most dreadful and unattractive person only needs to be loved, and they open up like a flower."
やっぱりおもしれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
世界観と映像、技術そのものがやはり好きだなあ、アンダーソン監督。
最初見たときは三谷幸喜みたいな映画で豪華キャスト出演でジュード・ロウやビルマーレイなど意外な役柄で登場してきたので無駄遣いだなってもおもったところはありました。(とくにティルダスウィントンの老婆特殊メイクに仰天!)
でもストーリーはなかなかよかったですよ
笑えるところもあるし、はらはらドキドキするところも素晴らしかった!!
絵本の中に入り込んだような世界観もキレイでやっぱり、こういうファンタジーあふれる映画は好きなんだよな
物語は小説の中から始まって、作家が経験した話をもとに、昔の話に入ってボーイだったおじいさんにその昔話を聞かされてやっと物語が本格的に入り込みました。
コンシェルジュ(ヴォルテモートのひと)が婦人の残した遺産の謎を解くべく、ボーイとともに捕まったり逃げたり、他のコンシェルジュたちに助けてもらいながら白銀の世界を駆け巡る内容となっています。
ちょっと過激なシーンがあって、生首や恒例の動物死亡が含まれているのですがこれもアンダーソンお約束なのかな?って時々思ったりした。
どんどん見るたびに衝撃的な展開に入ってくるので本当にやばい、面白いって感じました。
スキーの追跡シーン、速すぎだろwww
しかし、謎はわかったものの最後が切ない展開になってしまいました、、、、
舞台は戦争の時代だったのでコンシェルジュさんのところ、悲しいなぁ。
せっかくハッピーエンドになるかと思った矢先にアンハッピーに変わってしまうけどガッカリしませんでした。
今までアンダーソン作品を見てきたなかで最高傑作だと思っています。
たくさんネタバレしてしまいました。すみません。
ファンタジーな世界が広がるような作品で、ストーリーも面白かったです。
ウェスアンダーソンについて賛否両論が出ていますがこの作品はなかなかいいとのでオススメかと思います。
It's a picturesque film that won some Oscars
The story was not as good as I thought but the background of that film is so magnificent and it really deserves the Oscars that it won in 2015. As we expect the content by its cover or theoretical poster , it's a very comedy story and sometimes cracks some black jokes or shows some hilarious actions that are totally different from that of the other suspense or action films . One thing that I really wanna make clear is the actual murderer who assassins the woman though . I don't know how we call this kind of ending , happy ending or unhappy ending ? Lol I wish I could stay overnight at the grand Budapest hotel one day , perhaps I could manage to make myself comfortable there even though the author said that fewer people book the hotel recently than in the past . Have fun !
いつまでも心の中に残るすてきな世界
私がこの映画を観たシネマライズって、2016年1月7日で閉館してしまうそうだ。私のようなニワカはともかく、東京の映画ファンのみなさまには様々な思い出がある場所なのだろうと思う。思い出のある場所がなくなっちゃうのって、とても切ないことだ。
「彼の世界は彼が来るずっと以前に消えていた。それでも彼は見事に幻を維持してみせたよ」
この映画は時系列的に、現在(少女)‐1985年(作家/トム・ウィルキンソン)‐1968年(ゼロ・ムスタファ/F・マーレイ・エイブラハム)‐1932年(ムッシュ・グスダヴ・H/レイフ・ファインズ)年と、四重の入れ子構造になっている。登場人物が次々と過去を振り返ったかなたの昔に、私たちはようやくグスタヴを見つけることができる。その時代では目に映るもの何もかもが美しいが華美ではない。ホテルも、人々の装いも、ほんのり温かく優しい色合いだ。古き良き時代を、丁寧に丁寧に宝箱の中に閉じ込めたような、すてきな映画だ。ちょっとブラックなユーモアも、メルヘンチックにコーティングされていて少しも嫌な感じがしない。
しかしそのグスタヴの時代ですら、その美しさはもはや幻だったとムスタファは言う。わたしたちが観たのは、まさに消えゆくその間際のすがただった。痛快な冒険とハッピーエンドの後、グスタヴもゼロの妻となったアガサ(シアーシャ・ローナン)もあっけなくこの世を去る。たくさん笑って楽しんだ後に残る一抹の寂しさが、いつまでもこの映画を印象付けて、私たちの心の中で宝物のように残るのだ。
アレクサンドル・デスプラによるサウンドトラックも非常に素晴らしかった。
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