劇場公開日 2014年11月15日

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「絵本をめくる様な作品」天才スピヴェット 白波さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0絵本をめくる様な作品

2020年11月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2014年11月24日劇場鑑賞
ジャン=ピエール・ジュネ監督作品「天才スピヴェット」を観て来ました。 この作品は2Dと3Dがあり、私はスケジュールの都合もあって2Dで観てきました。
ですが始まってすぐ「しまった、これは3Dで観るべきだった!」と軽く後悔しました。
随所にスピヴェットの閃きや空想が画面に出てくるのですが、この表現が実に3D向きなんですよね。
もちろん2Dでしか観ていないのであくまでそんな気がするだけなのですが、ちょっとこれは悔しかった。ちゃんとジュネの意図を汲んでいれば良かったです…。
主人公のカイル・キャトレットはタイトル通り聡明そうな子役で、これがとても良い芝居をします。
可愛いだけの子役でなく、すでに味がある雰囲気なんですよ。
またこのカイル、役だけでなく実際もかなり賢いらしく、10歳の若さで6ヵ国語を操れるらしいです。
さらに作中で空手の型のような練習をしていましたが、なんと武道選手権(規模はわかりませんが)で三年連続優勝しているのだそうです。
いる所にはいるんですね神童って…。
そしてジュネ作品では常連のドミニク・ピノンも参加。短い時間ですがこのホットドッグのエピソードは素晴らしかったです。
こういう描写は本当うまいですね。
物語は弟の死によって歯車が合わなくなってしまった、田舎の家族のお話。
先にあげたギミック以外にも画面の色も美しく、アメリカを舞台にした絵本を開いている様な感覚がありました。
こんな世界で小さな子供が旅立つのですからドキドキがとまりません、観ていて自分が高揚しているのがわかります。
そうして気がつくと家族の暖かさに涙している自分がいました。
ジュネというと、とかく「アメリ」ばかりが取り上げられがちですが、そういった考えや期待をフラットにしてから観る事をおすすめします。
一人旅であり家出でもある、最初から最後まであくまで10歳の視点を保ったまま描ききったロードムービー。
家族や人とのふれあいが暖かい、絵本をめくる様な作品でした。

白波