劇場公開日 2014年5月24日

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「ネルソン・マンデラは自由と共に」マンデラ 自由への長い道 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ネルソン・マンデラは自由と共に

2017年11月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

知的

27年間も投獄されながらも、アパルトヘイト撤退と自由の為に闘い、後に南アフリカ大統領となったネルソン・マンデラ。
何度も映画の題材になっているが、本作は直球の伝記モノ。
ネルソン・マンデラという人物を改めて勉強するには丁度いい。

偉人として描かれる事が多いマンデラだが、意外や知らなかったその人物像も。
若い頃は弁護士だった事は何かで知ってたが、妻が居ながら、浮気…。結婚も3度も。
こういうダメな部分も描くのはいい。包み隠さず、それが伝記映画というモノ。

南アフリカでの人種差別の現状を目の当たりにして、抗う闘いに身を投じていく。
その方法は、時に実力行使。
国家から反逆者、テロリストなど要注意人物扱いされる。
しかし、その国家も、白人警官たちが無防備の黒人たちに銃を向け、発砲する。
目には目を…って訳ではないが、国の不条理な暴力と悪意の無い闘い、正しきは?と考えさせられる。

有罪。終身刑。投獄。
でも、本人が最も苦しんだのは、家族にも被害が及んだ事だろう。
妻も逮捕。拷問のような仕打ち。
罪人の身内も同罪って、一体いつの時代の事か。
こんな事がほんの50年も前の南アフリカで起きていた。

やがて南アフリカで、アパルトヘイト反対の気運が高まる。
国民が行動する。
国民はネルソン・マンデラを欲している。
釈放、そして…。
後は承知の通り。

波乱に満ちた半生だが、それが胸打つのは、ネルソン・マンデラ自身がそれらを経験したから。
見応えはあってその半生を知るには良かったが、作品はちょっとパンチに欠けると言うか、教科書通り型通り。
アパルトヘイト反対の闘いに身を投じる事になった動機、獄中生活時代の苦悩、国民の立ち上がりなども何となくは分かるが、何か深みや強さが足りない。
ラグビーを通じて人種の壁を無くそうとした『インビクタス』の方がじわじわと胸打つ。
2時間半の長尺は身構えるが、ネルソン・マンデラの95年の人生を全て描くには短すぎた。
なるほど、だからこれまで『マンデラの名もなき看守』『インビクタス』など一つの側面を切り取り、本作のような直球の伝記モノが作られなかった訳も頷けた。

イドリス・エルバの熱演は素晴らしい。
それにやはり、ネルソン・マンデラは偉大な人物だという事は再認識させられた。
彼は何も、南アフリカの黒人たちだけの自由の為に闘ったのではない。
南アフリカの国民一人一人、南アフリカという国の自由の為に闘ったのだ。
ネルソン・マンデラは“自由”の名と共に永遠に刻まれる。

近大