「作家はつらいよ。」サード・パーソン ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
作家はつらいよ。
いかにもP・ハギスらしい脚本、多重構造の人間ドラマが
幾つかのパートで描かれた後、ひとつに集約される、という
お得意のパターンで描いているんだな?とまずは思った。
一見、誰も関係ない各々であるようでいて、何やら胡散臭い。
其々の地で(パリ、ローマ、ニューヨーク)話は展開していき、
どこか共通項があったりもする(=子供)という、複雑な話を
また長ーく長ーくこれでもかと説いていくのがこの人の特徴。
最終局面でアレ?と思うあの展開と、その後の映像で今作の
謎がぜーんぶ繋がっていく。あーそういうことか、やっぱり。
…いや~。作家って、ホントに大変な職業なんですねぇ。
特に小説に興味がなくても、何らかのきっかけで読むことは
あると思う。その中に登場する人物を、一体どんな奴だろう?
と想像しながらも、「これは私に似ている」と思うことがある。
作家もそれを狙って読み手を惹き込んでいくのだろうが、
誰にでも暴かれたくない秘密や、消してしまいたい過去など、
他人には知られていないはずのことが一つや二つあるはず。
そこを赤裸々に描くということは、何らかの経験や聞きづて、
必ずいるとは限らないけど、知人・友人・家族のモデルケース
を例にとり、妄想仮想入り混じった人物像を作りあげている。
自分自身ならいざ知らず(いちばん多い)、
よくあるのは身近な家族を例にしてしまうケースで、読んだ
家族がブチ切れて訴訟や絶縁にまで発展することもあるそうだ。
でもホラ、これはフィクションですから…と言ったって、
あまりに酷いリアルだと身辺を怒らせてしまうんだろうと思う。
それを考えてみると、決して難しい話ではないことが分かり、
赦せぬ後悔や過去の遍歴に囚われつつ、最新作を書かなければ
ならない大作家先生の生みの苦しみ(これはおそらくハギス自身)
が冒頭から延々と続いていたんだということが理解できてくる。
なにもここまで~引っ掻き廻さなくてもねぇ^^;と思うのが、
常に複雑に交差させるのが大好きな脚本家ハギスらしい仕上がり。
好き嫌いは分かれそうだけど、
とりあえず最後までどうなるのか分からない展開に、子供の声が
脳裏から離れなくなるところなど(幸せであり)怖くも感じられた。
(アクションしないリーアム親父。でも家族は大切にしないとね)