劇場公開日 2015年3月7日

  • 予告編を見る

「何かが何かを撥ねる場面のみ力が入った作品。」ソロモンの偽証 前篇・事件 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5何かが何かを撥ねる場面のみ力が入った作品。

2015年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

設定の荒唐無稽さを成立させるための気配りが足りず。
話の現実感が非常に乏しい。
全体的に雑味が多く話に没入し難い印象でした。

まず登場人物達の会話が不自然。
特に中学生の会話が“The 大人が考えた子供の会話”。
数年前までは『劇中会話』として仮想世界として許容出来たやもしれませんが。
近年、映画「桐島、部活やめるってよ」等の秀逸な作品が出る中で淘汰されたはず。
……にも拘らず25年前という設定に甘えて再びNHKドラマ「中学生日記」の茶番を繰り返す神経に心底嘆息。
妙に堅苦しい、古い古い文献を参考にした借り物の会話には違和感しか覚えませんでした。

役者の演技も過剰。過剰過ぎて雑。
池谷のぶえ、塚地武雅の夫婦役の型通りの白ける場面。
後編で『実は真相を知った上であの人物を意図的に…』という展開が無い限り成立しない。
仮に有ったとしても雑過ぎて、やはり成立しない過剰な演技。
冒頭の尾野真千子と余貴美子の遣り取りも茶番。
余貴美子のおざなりなポンと手を叩く姿や間の取り方は雑味そのもの。
永作博美も大概。
癖が強過ぎて現実感はゼロ。
懐かしのTBSドラマ「ずっとあなたが好きだった」を観ているような気持ち悪さ。現実感の無さ。
90年代の話だからと言って90年代ドラマの古臭さを踏襲する必要は無いかと。

唯一、過剰な演技の中で光っていたのは市川実和子。
突き抜けて気持ちが悪い。
最上級の褒め言葉として……生理的に気持ちが悪い。
数瞬しか画面に表れないものの強烈なインパクトを残していました。
背中を使って画面からはける姿は好感を持ちました。
ただ、この使い方も映画「アナザヘヴン」に近似。
全体的に90-00年代の古臭い知識や印象を改めて見せられている感が。
役者の使い方に何一つ新鮮さが無い点が……逆に新鮮でした。

主演の藤野涼子も中途半端に駄目。
90年の普通の女子中学生に成りきっていると思いきや。
或る印象的な場面で見せる左耳のピアス穴。
自分の事はさておき兄弟の世話をする彼女が、中二の彼女がピアスの穴をバッスン。
古臭い中学生日記をやりきるならば、その点も留意をして欲しかった。
中途半端に雑で興醒めしました。
この点も含めて後編で彼女自身のキャラを引っ繰り返すのであれば見事な演出だと思います。
当然、映画「渇き。」のような展開になるんですよね??

話も大概。
確かに後編に引き伸ばされた、事の真相に少々興味が惹かれる点は否ませんが。
それは話が完結していない気持ち悪さから起因する興味のみ。
荒唐無稽な設定を補佐すべき演出自体が雑極まりないので。
全体的に現実感は非常に薄く……極端な話、どうでもいいと言えばどうでもいい。
誰にも感情移入が出来ない作品に仕上がっていました。

何かが何かを撥ねる場面のみ力が入った本作。

本作で息を呑んだのは“何かが何かを撥ねる場面”のみ。
作中に2回、該当場面があるのですが。
意味も無く力が注がれており。
作品全体の品質に決して寄与はしていませんが良い場面になっていました。
特に1回目の該当場面。
ギョッとする程の唐突感、思わず息を呑みました。
2回目の該当場面も意図的に期待を煽る作りになっており。
1回目の興奮冷めやらぬ内に「クルぞ、クルぞ」を思わせ。
「アレ!?こないかな。。」という所の唐突感。
この2回の該当場面は観ていて面白かったです。

あとは総じて凡俗。
中途半端な所で終わる前編を観ると後編を観ざるを得ない残尿感が。
前編観た上で後編も耐えられる方のみ。
オススメです。

コメントする
Opportunity Cost