「これが人類に待ちうける未来か。」トランセンデンス ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
これが人類に待ちうける未来か。
クリストファー・ノーラン製作総指揮!ジョニー・デップ主演!待望の近未来SF映画が遂に登場!て感じの『トランセンデンス』でございます。
「トランセンデス」とは「超越」って意味だそうですけども、一体、何が「超越」したのか!?というのがこの映画のテーマな訳です。
内容としては「人口知能が自我に目覚め人間側のコマンドを無視!そして暴走!遂には人類の脅威となってしまう!」的なSF作品の系譜なんですけど、それをもう一歩前進させたというか、違う地平を開拓してくれたなあ、という印象です。
で、この映画、自分「違う地平を開拓」と表現しましたけども、生粋の純然たるコンピュータ、ロボット、人工知能がとち狂って暴走!て展開じゃないんですね。ジョニー・デップ扮する天才科学者ウィル・キャスターが、テロの襲撃により余命幾ばくもなしに。だったらば!と自分の命が尽きる前に、自身の自我をコンピュータ内にアップデートさせてしまおう、と科学者仲間と画策するんです。電脳空間にウィルの自我を住まわせちゃおうと。肉体は滅びても心は死なない的な。で、その計画は見事に成功しちゃって。彼は人間をやめ、神の領域、ひとつのステージへと「トランセンデンス」した訳です。
広大に拡がる電脳空間。そこに解き放たれたウィルの自我は、恐ろしい速度で進化を果たしていく。ネットを総べ、潤沢な資金を手に入れ、街を買収して研究所を設立する。そこで人類未踏の新技術を次々と開発。やがて究極のナノテクノロジーを完成させた時、物語はとうとうおかしな方向へ舵を切ってしまう。
そんな彼を手助けするのが、あるひとりの(正真正銘、人間の)女性。ウィルの最愛の妻でまた彼女も同業の科学者という、レベッカ・ホール扮するエヴリン・キャスター。最初は人工知能と化したウィルに献身的に、盲目的に協力していたエヴリンだったのだけど、やはり少しずつウィルの挙動に疑念を感じ始めて……。
こうやってストーリーを羅列するとめっちゃサスペンスフルですな。実際も豪華俳優陣を揃えてるし、VFXによる特殊効果も斬新な表現で見応えありましたね。
ただね、何ていうんでしょう。いまひとつ、いまひとつ物足りないんですよね。革新的だし野心的なんだけど、そこまでの壮大さが感じられなかったというか。地球全体、人類全体に関わる大いなる危機、てのはとても伝わるんですが、それに画の方が伴って行ってないというか。最終決戦の舞台を小さな街に限定しちゃってるのがね、やたら局所的というか。まあ、ここは好きずきなんでしょうけども。
でもあとひとつ、何かでかい花火が欲しかったかなあ、と。
まあ、そんなところです。