「攻める吉永小百合。」ふしぎな岬の物語 mg599さんの映画レビュー(感想・評価)
攻める吉永小百合。
いまどき珍しい映画である。エキセントリックなストーリーが最近の身上だが、本作にはストーリーらしいものがない。
岬にたたずむ喫茶店。悦子(吉永小百合)がひとりで経営している。
甥の浩司(阿部寛)が喫茶店のそばの小屋に住んで悦子を守護している。
タニさん(笑福亭鶴瓶)は30年来の常連。
と、これらは役者の柄がものをいっている設定である。
繊細な映画を目指していたはずだから、細かいところで違和感があった。
コーヒーを入れるための水を、離れた島に汲みにいく。そこで、水は生きている。やさしくそっと扱って、と悦子はいう。その悦子が道端に咲く小さな花を2輪摘む。花の命は?
親しい人たちが去っていくなか、岬の喫茶店が火事になる。
放心状態になっている悦子の気持ちはよくわかる。だが、そんな人が鍋にお湯をわかすだろうか。
そういった傷も終盤の吉永小百合の長セリフが全部さらっていく。
受けの芝居が素晴らしい吉永小百合。本作でも大半が受けである。この終盤だけ攻めに転じる。成島出監督の演出も吉永小百合の攻めを際立たせる。惜しむらくは、途中で阿部寛のアップを入れてしまったことで、上がっていたこちらのテンションも下がってしまった。
吉永小百合が自分で企画までしてしまったわけだが、難しい類いの映画になってしまった。
のぞみちゃんのエピソードをもっと押し出せば、となるとまた別の映画になってしまうか。
吉永小百合にはもっと映画に出てほしい。
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