「幸せに気付くその日まで。」思い出のマーニー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
幸せに気付くその日まで。
米林宏昌監督の第二弾。
ジブリの御大二人のあとで自作公開ともなれば、かなりの
風評が吹き荒れることは間違いなし。それを以ってしても、
私はこの監督の作風は好きかもしれない。アリエッティは
かなり良かったクチだが、今回のこの「暗~い」話も(ゴメン)、
入っていかれた。ジブリかと思う位ファンタジー度は低く、
子供向けという割にはドキドキもワクワクもしないこのお話。
しかしながらイギリスの名作児童文学に描かれる主人公が、
現代の子供の実像にけっこう迫っているところが興味深い。
この主人公の杏奈(原作はアンナ)にそっくりな子がいた。
確かその子も12歳の頃だったと思う…急にそれまでと趣が
変わり、内向的になってやがて学校にも行かなくなった。
その子の両親から相談された私は、以降その子をしばらく
預かってみたり、話を聞いたりしたけど、全くダメだった。
何が彼女をそんな風に悩ませたのかは分からない。だけど、
今作を観ていて何か実感できる部分が多く感じられたのだ。
よくいえば感受性が強く、他者を鋭い視線で観察できる子。
悪くいえば人間嫌いと誤解され、仲間外れになりやすい子。
でもどっちの性格も一長一短、内向的か外交的かにもよる。
少し前に観た、「円卓」という映画に出てくるこっこが陽で、
この杏奈が陰、そんな感じがした。決して悪い子じゃない。
思っていることが巧く表現できず、口を開けば憎まれ口を
叩いてしまう…(太っちょ豚って^^;)悪気はなかったのにね。
自分が実はもらいっ子(養女)であることを悩んでいた杏奈。
育ての母のことをいつまでも「おばちゃん」と呼び、養育費
の手紙を見つけた時も、本音を吐露することができない。
実際は感謝しているだろうし、心根だって優しい子なのに、
なかなか「おかあさん」と呼んであげられないところが辛い。。
そんな彼女が喘息の療養のため向かった田舎で、マーニーと
いう金髪の少女と出逢い不思議な体験をする…という物語。
突如登場するマーニーが何者か、そこがネックなのだが
謎が解けるのは案外早いかも。現在と過去が行ったり来たり
する構成は分かり辛いが、謎が解ける中盤以降は分かり易く、
ともすれば、何だこんな話だったのか。と拍子抜けするかも。
杏奈の性格のように深く入り込んでいく心情ストーリーなので
映像面で華やかな部分が少なく、一番のファンタジーといえば
監督入魂の、二人がワルツを踊るところくらいだったかな…。
ジブリっぽさに欠ける新作だが、監督らしさは伝わってきた。
(一番難しい年頃かも。その子の性格に因るから正解はないし)