「ビジュアル面は良かったが設定/構成には大きな違和感が。」思い出のマーニー Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
ビジュアル面は良かったが設定/構成には大きな違和感が。
映像の見た目は非常に良かった。
が、肝心要の設定/構成に違和感を覚えてシックリきませんでした。
流れる映像は全編通して繊細で綺麗。
風景、建物、食物、人物…。
全てのモノが心地良く画面に映し出され、それだけで気持ちがアガる。
アニメーション作品の肝の一つは確実に押さえていると思います。
特筆すべきは食物。
田舎の庭にたわわに実るトマト。
全体的に色彩が抑え目な田舎の風景の中で鮮烈で生命力に溢れた赤。
その瑞々しいトマトが調理され……切っている時点で美味そう。
その他、素麺を除いた食事は総じて美味そう。
「スタジオジブリ作品は飯が美味そう」というイメージ通りでした。
ただ惜しむらくは設定/構成。
随所で違和感を覚えて作品に没入出来ませんでした。
まず主人公である杏奈が心を閉ざす切欠となった出来事。
個人的には理解が難しい、感情移入がし難い理由でした。
その要素を敢えて排除することでより或る気持ちが強調される、という考え方も分からなくないですが。
…現実的な事を考えると必要条件ではないのでは。
或る程度分別のつく年頃の子は理解出来る話ではないでしょうか。
本件については終盤に取って付けたような場面が差し込まれる点も含めて違和感が。
少女の成長譚として自分自身で乗り越える話の方が納得感があったように思います。
またマーニーの位置付けも不明瞭。
本作は杏奈とマーニーの交流が主軸となりますが。
謎に包まれたマーニーの言動や位置づけが最後までシックリこない。
明らかにミスリードを誘う一場面も差し込まれ、かつキチンと回収されないため、終盤の流れに謎解きの爽快感がありません。
「あれは…あれは……」と考えているうちに矛盾だらけで頭の整理が。
何か理由が無いと状況を呑み込めない頭の固さも問題だとは思いますが。
如何せん話の構造がゴチャついているため最後まで違和感が残ります。
最後に杏奈の周辺人物の不自然さ。
杏奈を受け入れた田舎の親戚夫婦、放任主義過ぎ。
話を進める上で都合が良い人物であり置物のような存在でした。
また田舎での孤立を示すための或る同世代女性の取り扱いも雑。
あまりにあまりな杏奈の対応への、違和感を覚える大人な対応。
杏奈の未熟さ/幼稚さを現すための人物かと思いきや、第三者の発言がその印象を覆します。
これにより「おあいこ感」が出てしまい意味なく杏奈を甘やかしているようにも感じられてしまいました。
そもそも、あの服装でそのアイテムを持っているという発言を信じるのもどうかと。。
そして中盤以降に登場する或る人物の距離感の縮め方も不自然。
似たような境遇とはいえ唐突感は否めない。
終盤の或る話に対するリアクションも大袈裟かつ唐突。
杏奈と当該人物の関係性が杏奈の成長を示す一つの材料にもなっているのですが。
上記の通り違和感だらけの人物であるため、こちらも取って付けたような印象を受けました。
ビジュアル面は良かったが設定/構成には大きな違和感を覚えた本作。
終盤の、敢えて二段階に分けられた“或る展開”にも嘆息。
観客全員が既に気付いていることを改めて、という手際の悪さにはガッカリしました。
とは言えスタジオジブリ作品。
一定の面白さはありますし何より鑑賞することで話題の種になるかと。
オススメです。