「抱き締めたくなるほど、優しく、温かく、愛おしい」思い出のマーニー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
抱き締めたくなるほど、優しく、温かく、愛おしい
「借りぐらしのアリエッティ」に続く米林宏昌監督第2作。
「アリエッティ」が結構好きなので、米林監督の新作という事で期待を寄せていたが、今回もなかなかの好編!
やるじゃん、麻呂!(笑)
まるで60年代70年代のイギリス映画を見たような味わい。
孤独を抱えた少女、海辺の村で過ごしたひと夏、洋屋敷と謎めいた美少女…。
何処かで見たような気がする。
懐かしい雰囲気がする。
ヒロイン杏奈の序盤の描かれ方は好き嫌い分かれる。
両親を亡くし、喘息を抱え、養母にも心を閉ざす孤独な少女。
それだけなら薄幸のヒロインだが、孤独なのは勝手に殻に閉じこもり、毒を吐く。
この時点で、杏奈を嫌いになってしまう方も多いだろう。
しかし、序盤と終盤の杏奈は別人のよう。
根はいい娘なのだ。終盤では誰もが杏奈を好きになっている筈。
そんな杏奈の心を開いたのが、マーニー。
蒼眼、金髪。杏奈と初めて会った時は白いネグリジェ姿。
萌えてしまうーーー!(笑)
ジブリヒロインの中でも際立つ美しさ。
この二人に芽生える感情は、ただの友情ではない。
ズバリ、愛だ。
「blue」という秀作青春邦画があったが、同作で描かれたような思春期の女の子同士の恋慕ではなく、愛なのだ。
数奇な因果、繋がり…。○○愛とでも言うべきか。この○○に入る言葉は、映画を見終われば自然と当てはまる。
マーニーは一体何者なのか。
“普通”の女の子じゃないのは明白。
終盤明かされるマーニーの秘密は、悲しい物語でもある。
が、杏奈との関係は、包み込んでくれるような傍に居てくれるような、温かい優しさに満ちている。
舞台となる海辺の村が美しい。ああ、行ってみたい。
種田陽平による美術が美しい。ああ、住んでみたい。
「アリエッティ」もそうだが、米林作品は音楽と主題歌が心地良い。
特にプリシラ・アーンによる主題歌は、レリゴーが耳にタコで飽きた分、静かに染み入った。
本作は、全てが分かった上でもう一度見ると、また違った感じ方がある。
ファンタジックで、切なくて、温かくて、愛おしくて…。
なかなか後継者が育たないジブリに一時期危惧したが、本作を見る限り、ジブリの今後は明るそうだ。
尚、今回レビューを書くに当たって、宮崎や過去のジブリ作品と比べるような事は避けようと細心の注意を払った。
宮崎と高畑が一切ノータッチの初のジブリ作品。
いつまでも比べるような事はあんまりだし、作品に対しても失礼。