「尾を引く作品」思い出のマーニー ちひろさんの映画レビュー(感想・評価)
尾を引く作品
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印象の選択肢に適切なものがなく、強いて言うなら「悲しい」と言うよりも「寂しい」というのが適切です。
映画が終わってアンナとマーニーの世界から引き離されたとき、寂しさを感じました。
あの湿っ地屋敷がある不思議な世界から現実に戻るのが、名残惜しかったです。
アンナとマーニーの二人の関係にのみしっかりと焦点が当てられていて、ほかの登場人物は敢えて記号的に描かれていたように感じます。
中でも印象的だったのが、空想の中に恋い焦がれるアンナとは対照的に、現実世界にしっかりと根を下ろしていた「太っちょブタ」の委員長です。
アンナにあれだけ酷いことを言われても、その場で同じ程度に殴り返して和解し、きちんと自分のコミュニティに入れてあげようとする度量の広さとバランス感覚は、本当に中学生離れしています。
自分のことで精一杯のアンナは、彼女の優しさには少しも気づきませんでしたが。
初期のアンナは、自分のことで精一杯な反面、自分に向けられる優しさに鈍感で、十代前半の多感な少女の典型のようでした。
輪の中にいる同級生も、周囲の大人も、お金も、すべてが世俗的で汚らわしく感じていた少女の世界が、少しだけ開いて前に進む瞬間をこの作品は見事に描いています。
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